2023年 日本を護るために
2024年 7月8日 ロシアの思惑
最近ロシア大統領の書いた論文が話題になっている。軍事アナリストはこれを根拠にロシアの停戦要求を今飲めば、要求は必ずエスカレートし、さらなる領土を求めてくに違いないと語っていた。このブログではロシアに領土拡大の意志はないと書いてきただけに、この言動には黙って見過ごすことは出来ない。さっそくその根拠となるプーチン氏の論文を覗いてみた。とはいえ私にロシア語は理解できないので札幌大学研究紀要 第 4 号(2023 年 3 月)大矢温氏の論文を参考にさせて頂いたのだが、内容はA423ページにも及ぶ長大な論文で戦時中の大統領が職務を遂行しながら書いた文章とは思えないほどだ。普通このような文章はゴーストライターが書いた文章に決まっていると思うのだが、実際論文を読んでみると祖国に対する熱い思いに溢れた文章で、これほどの情熱は普通の人の文章から感じることは出来ないのだ。これは私の感ではあるが、恐らくこの文章の中にはロシアが次に向かう方向性が盛り込まれていに違いないと思っている。
誤解のないように最初に断っておくが、この文章から一貫して受け取れるのは、ウクライナ住民とロシア人との一体感である、それは同じ言語を持ち、かつては同じ領土、同じ歴史、同じ宗教のもとで暮らしていた同胞ということを歴史学者のように面々と綴られている。なかでも印象的な言葉にルーシ人という言葉がある。とはいえこの言葉は様々な歴史学者の解釈によって変わってくるのだそうだ。ところでこの言葉が際立って使われているのがポーランド・リトアニア共和国が登場する箇所で、この国の繁栄はその後、ポーランド第一共和国時代で頂点に達した。ところがこの時代の地図には、ウクライナの国境線はないのだ。あるのはリトアニアからベラルーシ、ポーランドに繋がる国境線だ。そしてこのような地図がソビエト連邦誕生まで続いている。このことについてプーチン大統領の論文には1667年にロシアとリトアニア・ポーランド共和国で結ばれたアンドルソボ条約と、1686年に締結された永遠平和条約が最終的領土の総括を確定したとまで書いている。その後はナチスとソビエト共産主義によりこの国は物理的、精神的に分断が図られてきたと述べているのだ。つまりこのことは歴史的に正当性が認められるのはこの国境線だと言っているのではないだろうか。たしかに論文では終始ウクライナ人とロシア人は一体のもので、現在のウクライナ政府による脱ロシア化の動きは、反ロシア勢力による分断工作だと非難している。
さてそうだとすれば、何故ロシアは首都キエフに攻め込まないのだろうか、侵攻当初ドンバスを占領した勢いでキエフに攻め込めば、首都占領もさほど時間のかかることではなかっただろう、ところがロシア軍はドンバスから先には一歩も兵を進めず塹壕を掘ってそこに踏みとどまる。恐らくこれには論文にあるとおり法令の順守という考えが、プーチン大統領の兵を進める歯止めになっているのではないだろうか。
つまり、この侵攻はあくまでもドンバス地域の住民の生命を守るということが目的だったとう主張なのかもしれない。とはいえこのままロシアはウクライナの攻撃に対し防戦一方なのだろうか、それにしても西側の挑発行為はどんどんエスカレートし、核兵器の使用も近いのではないかという所まで事態は悪化している。
話しを論文に戻すと、論文の中でルーシ人の登場するところではポーランド・リトアニア共和国の話題が取り上げられている、このことはプーチン氏がロシアとウクライナは同じルーシ人だということを説明したいがためだけなのだろうか。私は以前この戦争を終結させる方法としてポーランドがウクライナの内紛に乗じて、ウクライナに治安維持部隊を送るのではないかというシナリオを思いついたことがあった。つまりウクライナで突然戦争反対の武力革命がおこり、その鎮圧のためポーランドが国連の承認により、その鎮圧に向かうというものだ。そしてウクライナを事実上の傀儡国家にしてしまうというストーリーだ。とはいえ実際に現政権の誕生もこのような経緯であることから、あながち荒唐無稽な話とは言えないだろう。ただし今回はロシアとポーランドが合意の下でこのような芝居を打つことになる。そうなれば、歴史に登場したポーランド公国の再来となるのかもしれない、そうなるとその後ろに控えるハンガリーの動きもより活発になってくるかもしれない、というのもこれからエネルギー価格の高騰で極度のインフレがますますオーストリア、ドイツの経済を襲うだろう、そして金融機関の破綻となれば、国力が極端に低下し、そうなればハンガリー王国の誕生があってもおかしくない。このようなことからロシア、ブリックスにたいし積極的に外交を展開するハンガリーの姿を見れば、これは未来への布石ではないかとも思えるのだ。
つまり、このままドルの価値が下がり続けるとすれば、この話を絵空事のように受け止めることは大変危険である。それは世の中にある現代の兵器が何で動いているのかを考えれば明らかで、核戦争でも起こらない限り、今西側の続ける軍事支援がどれほど理屈に合わないものかが分かるだろう。