春望録
2025年 4月15日 コンビニから覗く日本
昨日も朝の経済番組でコンビニの純利益が減っているという報道があった。特にセブンアンドアイの純利益が前年から減少していることを強調していたようなので気になってデータを覗いてみた。番組で特に違和感を覚えたのは営業収益と純利益を同時に可視化していることで、ひょっとするとここに何かしらの意図が隠されているのではと勘繰ってしまったのだ。とはいえ投資家が気になるところは配当性向だと思うので、だとすればごく普通の報道なのである。ところが逆に私はそこにこそ日本人の賃金が上がらない理由があると考えている。
そして改めてネットでこの情報を探ってみると、これらの報道にはやはり共通の流れがあった。というのもこれらの報道は他社に比べことさらセブンイレブンの純利益が減益になっていることを強調したいように感じるからだ。驚いてネットに上がっている様々な記事を調べてみると面白いことに気付いた。結局このようなデータを見るとセブンイレブンの売り上げ全体はむしろ他社に比べ増えている。ところが問題はここから必要経費を引いた営業利益を比べれば、セブンイレブンは他社に比べ前年比を割っているのだ。
因みにこれらのデータを見れば、この会社がどれだけの原価率で商売をしているのかが分かる。この場合、国内、海外ともにセブンイレブンの原価率はおよそ3割が基本のようだ。その他の会社では5割や1割と言う会社もある。ここは人件費を含め会社の経営理念にも関わる所なので、一方的な見方はむしろ危険だ。つまりこの会社が頑なに最も高い原価率を維持しているということは、社会貢献という意味も含めこの会社の経営理念を反映しているのではないだろうか。
とはいえ急激な物価高騰がこの会社の経営にも悪影響を起こしていることは否めない。因みに日本フランチャイズチェーン協会のデータによると2024年の客足は横ばいなのにも関わらず売上高が減り、それに合わせて客単価も減少しているというデータがある。このことはテレビ番組でも取上げられ、これまでのように顧客の訪問数と売り上げには相関関係が見られないという困った現象が起きている。つまりこれまで商売のセオリーとして信じられてきた薄利多売が成立しない世の中になってきているのだろう。
こうなるとこれからの経営には新しい経営ビジョンが必要になる。と言う事でコンビニと言えどもどこでも同じ価格で同じ品揃えという価値観だけでは商売が成り立たない環境なのかもしれない。そのためこの環境に適応していくためには高付加価値の製品を提供していくことが必然的に求められるのだといえる。ところでこれにいち早く気付き、会社を挙げて取り組んだのはコンビニスイーツの草分けローソンだろう。この会社はTV番組などを積極的に活用しこの分野を開拓していった。北海道の人気番組では番組自体がこの会社の商品開発に当たるという前代未聞の番組が人気を博している。
さて長々コンビニについて書いてきたが、売り上げが伸びているのに利益が出ないとは、どこかで聞いた話だ。因みに、私はこの状況をみて日産自動車の事を思い出していた。日産の場合も純利益が上がらないことを理由に、経営は買収ありきで進んでいたように思えた。果たして本当にそれでよいのだろうかと言うのが、私の思いなのである。というのも一見金属の塊でしかない自動車も、そこに使われているネジ一本に至るまで日本人の思いが込められている。それはまさに日本人の魂そのものと言えないだろうか。
話をコンビニに戻せば、セブンイレブンといえば日本のソールフードおでんを、コンビニ業界に導入し成功させた実績がある。このようにユニークな発想を海外の経営者に求めることは出来るだろうか、コンビニと言えば世界中どこに有っても同じクオリティーが要求され、それこそがコンビニ唯一の存在価値のように思われてきた。とはいえ、この業界に参入した日本人はここでもオリジナリティーという日本の魂を注ぎ込もうとしている。