今昔問答
2025年 9月6日 民主主義の危機
内容をお伝えする前に、民主主義とは何かを定義しておきたい。民主主義とは民意を政治に反映させることだが、その前にそもそも民意とは何かという話にならないだろうか。この定義をあらためて考えてみると国民が存在するためには国という括りが必ず必要になる。なんだかあたりまえ体操のようになってきたが、最近この当たり前がどこかに行ってしまっていて国民ファーストといえば、極右だ、ポピュリズムだと言い出す学者や弁護士まで登場してしまうのだから、学歴や資格とは何かということすら怪しくなってくる。そんな立派なものがなくても、民主主義が成立するためには最低限国という枠組みが必要になることや、その意見を政治に反映させるためには多数決が用いられていることぐらいは容易に想像がつく。
簡単に言えば選挙に負けた政権が政策に携わっている状態は民主主義が反映されている状態とは言えないのである。前置きはこのくらいにして、BBCニュースによると9月14日ドイツ最大の人口を抱えるノルトライン=ヴェストファーレン州で始まる地方議会選挙で、ある特定の政党からの立候補者が7名も突然亡くなったというのだ。その政党とは極右ポピュリズム政党のレッテルを張られているドイツのAFD党だ。この議会議員選挙では195名の議員定数を競う事に成るが、それにしても、過去日本で行われたいずれの選挙でもこれほど恐ろしい話は聞いたことがない。当然これほど特定の政党に偏って死亡者が発生している状況は都市伝説などと言って看過できるものではない。
不思議なことに、このような保守系政党の受難は今や世界的規模になっている。例えばお隣の国フランでもルペン氏率いる国民連合は国民の支持では最も伸びてはいるものの、先日のニュースでは党首を初め多くの議員が公金不正流用の疑いを掛けられ、そのあおりで党首の大統領選出馬は危うい状況になっている。ところがそれに比べフランス大統領の支持率といえば相変相変わらずの低迷ぶりで、今回誕生したばかりのドイツ首相とも人気の無さではいい勝負になる。ここに人気の無さでは今や横綱級と言われる日本の首相も加わるのだが、何故かこのねじれた構図は地球儀上で表裏一体の形をしている。そうしてみると彼らもまた地球を俯瞰するものの哀れな駒にも見えるが、彼らによって現実に戦場に送られたものの思いを考えれば感心してばかりではいられない。
と言う事は、極右政党がこの戦いに負ける事に成れば、世界はこのように不当な逮捕や、命を狙われる恐怖によって支配されることになる。今は地球の裏側のことかもしれないが、このまま日本人が政治に関心を向けなければ、いずれ日本にもこのように危機的状況に陥ることは火を見るより明らかなのだ。さて日本では近じか総裁選が前倒しになるという噂がある。その結果、民意と足並みをそろえられる総裁が選ばれるかどうか厳しい決断が迫られる。