思考ラボ
2023年 11月7日 才能と努力と幸運と
芸能人が世間に認められるためにはこれだけのことが同時に必要になる。どれだけ恵まれた才能をもって努力を積み重ねても世間にもてはやされるまでには偶然としか思えないような幸運が必要になる。そんなことを最近私は朝ドラを視ながら感じている。
というのも朝ドラの「ブギウギ」に登場するヒロイン水谷趣里氏の演技に圧倒される思いを感じるからだ。彼女の恵まれた才能もさることながら、それを磨くためにあらゆるジャンルの芸ごとを身につけ、精進されている様子を感じている。このような精進の仕方は、まるで日本の古典芸能を極める噺家ようにも思える。
それは噺家が一見落語の世界とは別世界にも思える日本舞踊や文楽、歌舞伎などを日頃から一生懸命学ばれていることに通じる。それをなくして寝床や七段目の面白さは伝わらないのだ。私はこのような努力がいずれ彼らが生み出す名演というものに繋がると思っている、それは時間を経ても色あせない芸の堅牢さにつながるからだ。
ところで、このようなドラマにはライバルがつきものだ。そしてそこで生まれる葛藤を視聴者は自分に重ね合わせてドラマを楽しむのである。とはいえこれは現実世界に通じる話なので我々視聴者も素直に共感できるのだ。もし現実世界で身近にそんな存在がいれば、意識に有っても無くてもそれを超えようとするのが、このような才能を授かった人たちの宿命のようにも感じる。
私の勝手な想像だが、それがもし最も身近な存在である父母だったとしたらどうだろう、それが偉大に見えれば見えるほどそれを超えようとするプレッシャーは計り知れないものになるのではないだろうか、などとつい余計なことを心配してしまう。だとすれば、そんないらない思いにとらわれることの無いよう、このような境遇の方にはそんなプレッシャーよりも作品や名演を残すことに集中していただきたいと思う。その方のオリジナル作品、名演を楽しみたい、これが芸能ファンの正直な思いだ。