2023年 冠水と街の記憶
自分の記憶には冠水の記憶はない、ところが私の細胞には、そんなこともリアルな感触として残っているように感じることがある。心理学の世界では肉体を超えて、深層心理は無意識の世界と繋がっているといわれるが、そんなことがリアルな感覚として感じることがある。
それはその場の匂いであったり風景であったり、あるいは毎日腰掛ける椅子に腰かけているだけの何気ない一時でも、急に心が騒めくような感情に包まれることがある。
その感情はむかし出会った風景と再会したときの懐かしさに似ている。
私はそんな感情を絵画や音楽の世界で感じることがある。例えば何が描いてあるのか判然としないような絵を見ても、初めて耳にするメロディーであっても、急に懐かしさがこみ上げてくることがある。そんな時自分は今、無意識と繋がっていると思うことにしている。それは自分とは違う個性の記憶かも知れないのだが、その記憶は確かに自分と繋がっていると感じるのだ。
私はそんな記憶の触媒のような作品の創作を目指している、それが、絵画からつながる無意識なのだと思っているからだ。