今日は好日
2022年 7月27日 初物
夏といえばスイカを食べないと夏を過ごした気分になれない。スイカといえば、昔は一玉ごとビニールひもで編んだ網に入れられていて買ったらそのまま手に提げて持ち帰っていた。大きさにもよるが、大きなものになると、その重みで紐が指に食い込んできて、とても切なかった。そんなことを思い返していたら、また、例の友蔵氏が押しかけて来た。「初物のスイカ下げて指赤く」今では冷蔵庫を開ければいつでも冷たい飲み物が手に入るのだが、夏の楽しみといえば、私にとっては、ビールの次に適度に水で冷やされたスイカだ。
ちなみに、昔のほとんどの台所には、いったん水を汲み置く大きな陶器のカメが用意されていた。不思議なことに水道水を直接飲むのではなく、水は水道からいったん瓶に汲み置きされる。水を飲むときは、瓶の蓋をよけて、アルマイトのひしゃくですくって飲んだ。こうすると、適度にカルキ臭さが抜けて、水はとてもおいしく感じるのだ。しかもその水は何故か冷たく感じた。
そして今頃の季節に水瓶の中を覗くのは、ささやかな楽しみでもあった。喉を潤すために水瓶の蓋をよけて中を覗くと、水瓶一杯にスイカが浮かんでいることがあった。そんなときは冷えたスイカが食卓に運ばれてくるのが楽しみで仕方がなくなる。いまは季節に関係なくどんな果物でも手に入れることができるのだが、あの瓶の水で冷やされたスイカにはとうてい及ばないのだ。