今日は好日
2021年 11月4日 まだまだと言っていた人間国宝
昨日テレビの録画を見て驚いたのですが、柳谷小三治師匠が亡くなられたことを昨日知りました。そのため追悼番組なのでしょう。私はしばらくテレビを見ていなかったので、このニュースをきいてとてもショックでした。
小三治師匠は私の大好きな噺家さんで、その切っ掛けとなった噺が「子褒め」でした。今から40年ほど前にテレビの高座を見たんですが、テンポが良くて畳みかけるような噺の勢いに笑いが止らず、あまりの苦しさから涙を浮かべてのたうち回るほどでした。
それからしばらくして大変な病気をされたようですが、その頃から噺に間が出来るようになり、その間が心地よく感じられるようになりました。
この間というものに芸の奥深さを感じさせてくれたのですが、なにせ話していない沈黙の時間にも何かを感じさせてくれるんですからすごい芸です。
そんな小三治師匠が36年間欠かさず通われたのが旭川にある寄席だそうです。テレビの画面からはとても小さな寄席で、人間国宝に相応しい大舞台とは言えないところです。なんでも若いときに苦労しながら自分の高座を探し求めていたころからのご縁だそうです。そんな縁をずっと大切にされる方なんですね。
そしてそこでのインタビューで話されたことは、いくつになっても高座に上がる時は前座の時のように緊張するそうです。また「自分はまだまだだ」という言葉も印象に残りました。これは単なる口先だけのことではなく師匠の行動のすべてがそのことを物語っているんです。
落語は日本独自の芸のはずで、その日本で人間国宝という頂点を極めたんですから、周りには比較になるひとは誰も居無いはずです。そのような方が「自分の芸はまだまだだ」と言っています。全く執着の極みで修羅の世界の人ようですが、私にとって師匠の人生は輝くほど美しい人生に感じます。愛するものに己を捧げた人生ってかっこいいですね。