春望録
2025年 4月13日 じっくりじゃダメなんです
今朝もTVは関税の話題でもちきりだ。確かに日本の戦後復興はアメリカありきで成し得たと言える。それほど、アメリカ市場はこれまで日本を支えてくれたことは間違いないだろう。その様子はまさにおんぶに抱っこと言う言葉も大袈裟ではないように感じるくらいだ。そしてそんな環境を支えていたのが、先ごろまで目の敵のように扱われていた超円安だった。なにせ世界中のほとんどの製品のシェアは日本アズナンバーワンと言われた時代、1ドルは360円の固定相場だった。そして日本に初上陸したファストフードのマクドナルドバーガーの値段も1個360円で日本人はこれを有難がって行列を作って食べていた。
この時は、賃金も金利も時間経過とともに上昇していくすべて右肩上がりが常識の時代だった。ところがいつの間にか日本は時間と共に成長していく常識が常識ではなくなってしまった。この時も右肩上がりの経済成長を止める切っ掛けはベトナムでの戦争だった。これにより金の流出が止まらなくなったアメリカは金によるお金の信用を担保できなくなり結局変動相場制へ移行せざるを得なくなった。
その後の50年近くは原油取引をすべてUSドル決済にすることでアメリカは、ドルの信用を担保することに成功していた。ところが一昨年あろうことかこの信用をUSドルは手放してしまった。この切っ掛けがロシアへの強烈な経済制裁で、やはりウクライナ戦争という戦争が切っ掛けとなり、USドル一強の神話はもろくも崩れ去ってしまったのだ。そしてこの状態を何とか正そうとしているのが、現在のトランプ革命で、これによりどのようにドルの価値を維持していくのかということがトランプ革命の最も重要な命題になっている。
さてこれまでにオイルダラーという信用を手放してしまったアメリカはUSドルの価値をどのように維持していけばよいのだろうか。そこで必要になるのがアメリカという完結した市場で自国通貨を流通させることだ。つまり為替という外部圧力を排除し、すべての経済活動をUSドルのみで決済出来れば通貨の大暴落と言う最悪のシナリオは回避できるのだ。とはいえ一国でこれを達成させるよりも自分たちの価値観を共有できる相手あれば、共に手を取り経済発展を目指しましょうと言う事になるだろう。
なので、今個別の税率がどうのという問題よりも国家として信頼のおける盟友であることをアメリカにハッキリとした形で示すことが重要だろう。結局現在の日米関係は安倍政権以前の日米関係にリセットされてしまった状況なのだろう。
このような視点で現在の関税問題を見れば、政府の取る政策はまるで的外れなのである。ハッキリ言って現在のアメリカは関税により自国の税収を賄うことが最終的な目的ではなく、限られた経済圏の中で共に新しい価値を創造していくことが出来る盟友を探していると言う事なのだろう。
つまり「関税が高いので貿易を控えるといえば、どうぞご自由に」と言う事をこの全方位関税によって各国に伝えているのではないだろうか。
このような状況で最もアメリカが注目している国は、地政学的なことを考慮しても日本以外ないだろうと思ってしまう。と言うのも日本は広大な領土も豊富な地下資源も持ち合わせず、国民の知恵と努力で新たな価値を創造し経済を発展させてきた理想の経済モデルでもあるからだ。
つまり、今日本に期待されていることは市場開放やアメリカ製品の購入促進ではなく、共に新たな価値を創造できる盟友ということに違いない。だとすれば、日本は他国にその支えとなる技術を簡単に流出させてしまうような環境であってはならないのだ。そのような環境整備を実践し両国の貨幣価値を如何に維持していくことが出来るかがこの問題の鍵になるだろう。だとすれば現在の政府の行動を見れば、これ以上アメリカとの信頼はけっして創り上げることは出来ない、残念ながら日本の問題解決はまずここから始まるのである。