春望録
2025年 4月22日 増税が日本を救う?
今話題の消費税だが、おそらくこれを少しばかり削っても期待した経済効果は望めないだろう。それより今の日本経済は、何か構造的な欠陥を抱えているように思えてならない。というのも今の日本は経済指標だけで言えば、意外にも景気はすこぶるいい。とはいえそう実感できる人がほとんどいないことが日本経済の闇だろう。
しかも企業の倒産件数などを見れば呑気なことを言っていられない。とはいえこのような事態は、以前から内閣支持率に反映されていて、トランプ革命以前から日本の政治に暗い影を落としていた。その証拠に民意は衆院選前から経済対策最優先であり、減税を掲げた党が大幅な躍進を遂げていた。その最も大きな不満が収入の低さだろう。とはいえいまだGDP世界第3位の経済大国でありながら、日本国民は何故これほど収入が低いのか、巷で真っ先に聞かれるのが税金の取り過ぎだという。ではそれだけを改善すれば、30年前の日本のように労働者の賃金は右肩上がりの成長を取り戻すことが出来るのだろうか。
何事も偏った考えや決めつけは良い結果を生まないが、様々な考察により答えに近づくことは無駄にはならない。とはいえこれまで私は、この不景気は消費税導入により消費マインドが冷やされ、その結果景気循環が阻害されてしまったと考えてきた。そうは言っても消費税増税がある度に、いきなり消費が何兆円もへこんでしまうのは、いくら何でも影響がデカすぎのように感じる。例えば何千万円の住宅購入ならまだ理解できるが、108円のおにぎりが110円になった途端、コンビニの棚から余りだすと言う事も見たことがない。しかしながらこれは景気悪化の事実としてデータに残されている。
そこで、この現象の裏には別の原因があるのではないかと考えてみた。すると、この増税とほぼ同時に法人税の減税が行われていることが分かった。では法人税が減税になるとなぜ景気は冷え込むのか、まともな人の考えでは企業が潤うことは、企業に雇われている従業員にとっても良いことだと思ってしまうはずだ。そこであらためて消費税と法人税の違いについて確認してみると、消費税は法人格があるなしに関わらず物(付加価値)の売り買いにより、トータル1千万円を超えれば消費税が発生し納税の義務が生まれる。
ところが一般的な課税所得では、さらにここから様々な必要経費の控除が認められているのだ。例えば家賃や光熱費、様々な設備に掛かる借金やレンタル料などサラリーマンでは思いつかないほど多様な控除が認められている。この中で必要経費の筆頭に来るのが人件費だ。法人税では給与やボーナス、役員報酬など様々な経費が人件費として控除が認められている。逆に言えば消費税とはこれが認められない過酷な税金である。普通経費を控除して赤字になれば納税の義務は免れるところだが、消費税にはそれすらない。しかも現在のインボイス制度は収入1千万円以下の事業者にまで納税の義務を課す弱い者いじめにも等しい税制だ。そればかりか、これによる事務の負担は企業経営にも大きな足枷になっている。
ところでこの税により誰にどんなメリットが生まれるのか考えてみると、残念なことに、この税はこんなことすら判然としない。そもそもこの税が導入される切っ掛けは、特定の法人にばかり税負担を求めていては税収の永続性が維持できないという理由だったはずだ。つまり、企業にばかり税負担を求めるのではなく消費者にも広く薄く負担してもらおうというのが、この税の趣旨だったように記憶している。そうだとすれば納税義務者は消費者のはずである。確かにレジのレシートには消費税なにがしの記載はあるが、このお金が入湯税のようにそっくり納税されていのるかといえばそうでは無い。結局納税の義務を負うのは売り買いに携わった企業と言う事に成り、この企業が納税しない限り消費税が納税されることはない。言い換えればこの税は必要経費の認められない法人税のようなものである。
さて今日はここからが問題で、ぶっちゃけ過去に遡って法人税のみの時代と現代の消費税を導入した場合の税収と比べるとどちらの方が、税収は増えるだろう。意外なことに高い法人税のみで計算した方が遥かに高い税収になる。そればかりでなくこの時企業は人件費控除を最大限利用して必死で節税に励むはずである。因みに過去労働者の賃金が最も伸びていた時代の法人税は最高税率が何と45%で、現在の所得税率と同じになる。
要するに10%に及ぶ消費税増税もさることながら、これに合わせて行われてきた法人税減税も、労働者の賃金上昇を抑え経済を停滞させた要因ではないかと思うのだ。つまり消費税増税は法人税減税の隠れ蓑に使われてきたのではないかと思うのだ。だとすれば減税により国民の収入を増やすと考えるよりも、増税により賃金を上げると考えた方がより正解に近いように感じている。また、これとあわせて検討して欲しいのが企業の内部留保でこれについてメスが入れば、予算を国債に頼らなくても膨大な規模資金による景気循環が期待できる。
減税が無理なのであれば、増税と言って経済対策を進めては如何だろうか。