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今昔問答

2025年4月12日ようこそブログ

2025年 4月9日 本物と偽物

最近美術の世界でも贋作による被害が横行し、日本でもその被害が確認されている。とはいえこのようなことは昨日今日に始まったことではなく、これをテーマに何年も続く人気番組が出来上がるほど世の中偽物で溢れている。ところが、困ったことに現在ではますますコピー技術が向上して、これまでプロの目利きとして活躍されてきた質屋が家業を維持できなくなっているという。

では何故ここまでコピー品の精度が上がってしまったのかといえば、早い話がワールドサプライチェーンという考え方で、企業が安い労働力を追い求めた結果、結局世界中同じクオリティーの製品で溢れかえるようになってしまったと言う事だろう。以前はブランド品と言えば、使う素材や縫製など明らかな違いがあり、所有しているだけでも所有欲を満たしてくれていた。そのため、通常の製品とはけた違いの価格を付けて取引されても誰も違和感を感じる人はいなかった。ところが、このブランドが世界中に生産拠点を持つようになってしまった為に、今ではクオリティーによる差別化が難しくなってしまったのである。結局ブランドはマークとデザインだけの価値しか持たず、一度真似されてしまえばその違いを見出すことは専門家でも難しくなってしまったと言う事だろう。

これに追い打ちをかけたのがパンデミックで、庶民が外出を控え見栄を張る場すら失ってしまえば、日本の成熟した衣料メーカーですらたちまち窮地に陥ってしまったのも無理のない話である。このようにグローバル経済と言えば、何となく聞こえはいいが、ブランドと言う信用にとってメリットばかりとは限らないのである。一方トヨタ社のように国ごとの需要に合わせた製品作りを目指そうという取り組みもある。これは大変理にかなった経営戦略だと思うが、問題はこれに対応できる企業が日本にはどれだけあるのかということだ。

もしそのような環境になければ、日本企業はまず自国の需要を真っ先に考えて欲しいと思う。と言うのも日本企業による賃金支払いがなければ日本人の賃金は上がる方向に向かわないからだ。これにより日本人の賃金が今後も上がらなければ、日本は自国の不動産さえ維持できない状況になる。さらにこのままの政治が継続されれば人口の増加など望むべくもなく、あらゆる産業は衰退の一途をたどることになりかねない。昨日も78歳の元気な料理人がテレビに登場していたが、番組ではこの店の跡継ぎのことは語られなかった。

因みにこれほど楽しそうな職業に何故跡継ぎが出来ないのかと考えれば、当然儲けの事を考えざるを得ない。つまりこの生業に充分な利益が生まれて賃金の支払いに困難がなければ、人は自ずとこのような店に憧れ集ってくるに違いない。ところがそうならないのは仕入れの値段が上がっても、その分を価格に転嫁できない店が増えているからではないだろうか。政府はこのような状況を外国人に依存して解決しようとしているが、今日本の賃金は他のアジア諸国に比べて見劣りする環境になってしまった。それを無理やり補助金と言う税金を使って補っているのが今の実態だろう。つまりこの分が周り回っていずれ税金に転嫁されれば、外国人労働者に頼る政策と言いながら、最終的に日本人の可処分所得は下がり、実質賃金低下の元凶になるだけだ。さらに言えば外国人さえ雇うことの出来ない企業にとっては、適正な価格転嫁が出来ず、結局この政策のしわ寄せばかりまともに受けてしまうことになる。

私はこのような志の高い料理人の基に若い人が集まり、その志を受け継ぐ若者が現れなければ、これから先の日本文化はその魅力を瞬く間に失ってしまうのではないかと強く危惧している。このような悪循環を終わらせるためにも、賃金低下の一因となる税制は早急に見直さなければならない。というのも日本人が創り出す世界に稀な魅力は、庶民が生きる暮らしそのものだと思っているからだ。昔「とと姉ちゃん」と言う朝ドラで、暮らしの手帳の創刊者杉浦弥太郎の印象深いセリフがあった。確か「世の中に最も大切なことは人の暮らしだ」と言っていたと思う。これは戦後、焼け野原に建つ掘立小屋を背景に語られた台詞だ。今その言葉が何故か強く浮かんでくる。

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Posted by makotoazuma