今日のできごと
2021年 3月17日 近代絵画の父
ポールセザンヌの「赤いベストを着た少年」です。絵を勉強された方にとってセザンヌは神に近い存在かもしれません。
でも、絵画にそれほど興味をお持ちでなければ、現代画伯の父のように見えるかもしれません。
とにかくこの天才の出現以降絵画の目指す方向が、がらりと変わることになります。後にキュービスムという表現もこの方の影響を強く受けています。つまり、ピカソやブラックが世に出る礎となったのが、ポールセザンヌです。
それまでの絵画が目指していた表現は3次元のものをいかに3次元らしく2次元の画面に定着させるかが表現の中心でした。ところがセザンヌが取り組んだのは、2次元世界の都合を3次元表現より優先させました。つまり2次元至上主義のような取り組みです。例えばこの赤いベストを着た少年から立体感を感じることが出来ますか、そのような視線でこの絵を観察すると、この絵はとても陳腐な絵に感じませんか。
見るからにモデルの腕は長すぎ、お尻は何かに腰かけているのか、それすら判然としません。つまり3次元のモチーフとしてこの絵を見ると全く表現できていないことになります。
これでは世紀の大天才の絵というよりは、今話題の画伯の先駆けではないかって思っちゃいます。でも彼が目指したのは、そこではなかったんです。彼が取り組んだのは線によって分割された平面で3次元のモチーフは、線によって再構成された画面のきっかけでしかありません。
リンゴは、円による構成の目印でしかなく、たとえ布の上に丁寧に置かれていたとしてもキャンバスの上には、円の輪郭でしかありません。このような作品が世の中に受け入れられることによって絵画の世界は、モチーフの3次元表現から抜け出し、平面そのものと向き合おうとします。そしてそのような表現の先に「表現とは何か」キャンバスを直接切ってみるみたいなところまで人間の意識は向かっていきます。そしていまここにたどり着くわけなんですが、こういうぐるぐるした世界が、私はとっても居心地がよくて好きです。