G-BN130W2PGN

お問い合わせ先

mail@makotoazuma.com

 

 今日のできごと

2021年9月14日gallery,今日のできごと

 

2021年 3月21日 江戸のモラル「錦の袈裟」

 

 

【江戸の暮らし】

 

 固そうな。タイトルを付けましたが、落語の話です。以前、高潔で誇り高い日本人というお話をしました。ただし、現代とは倫理観がけっこう違っていました。私には全く縁遠いことなんですが、性風俗に関しては現代人が公に受け入れられないことだらけです。その代表が吉原という風俗産業ではないでしょうか。現在でも地域を指す言葉に大門という言葉がいかがわしい生業がそこに存在していたというなごりです。

 

 さて、「錦の袈裟」これも落語のお題です。この噺も江戸時代の町人の暮らしや考え方を私たちに生き生きと伝えてくれます。

 

 内容は、当時、街ごとに職人たちの集まりがあり、今でいう組合や協会のような活動をしていたようです。そこではその町の威勢を示すために祭りなどがあると寄合のアピールを行っていたようです。

 

【錦の袈裟】柳谷権太楼師匠 落語研究会にて

 

 ある日のこと弥太郎の属する寄合で、隣町が吉原で赤いちりめんの腰巻姿でかっぽれを踊り評判になっていたことを聞きつけます。それならうちらも何かしようということで、向こうが、ちりめんなら、こっちは錦の褌でかっぽれだという話がまとまります。

 

 ところが用意できる布では、一人分足りない。じゃあどうする。ということになると弥太郎の出番が来ます。落語の世界では知的な弱者は弥太郎と言われますが、いまのようにないがしろにすることはありません。多少侮蔑的な表現があってもその存在を否定するようなことはありませんでした。

 

 さて、こんな与太郎にもし錦のふんどしを用意できれば、遊び代は持つのでかみさんに相談してくるよう持ち掛けます。そこで弥太郎は言われた通り「おっかあ、寄合でなか(吉原)に行くんで支度してくれ」それを聞いた女房は、夫が寄合から仲間外れになるのを不憫に思い、錦の織物を用立てる一計を案じます。

 

 弥太郎の女房は、和尚さんの袈裟を借りて腰に巻くことを思いつき、袈裟の借り方を伝え見事吉原に乗り込むことが出来ました。そして、弥太郎はその浮世離れした物腰と一際豪華な錦にどこぞの御大臣が来たとうわさされ廓で、もてにもてるというとても罰当たりで下品な話ですが、私が衝撃を受けたのは、自分の女房にお女郎買いに行ってくるとか、支度をしてくれとか全く悪びれるところがない、現代の倫理感とはかけ離れた世界についてです。

 

 私がとくに考えさせられたのが、現実との向き合い方です。現代の私たちは、理想のためには、実際に起こっていることにも目をつむります。ところが、江戸時代にも人買いは恥ずべきことと認識されてはいましたが。打ち消すことが出来ない以上しっかり向き合っているように感じます。大門とは常識や理想世界との区切りです。区切りをつけてもあるものを無いとは言わなかった。それがこの国にあって受け継がれてきた感性ではないかと私は思います。 

 

gallery,今日のできごと

Posted by makotoazuma