思考ラボ
2024年 6月24日 難解すぎる
昨日農林中金の債券売却による損失が話題となっている。これは今年3月の連結決算を受けての話らしいのだが、なぜ今海外債券の売却で損失が出るのか私には分からない。というのも前回話題にした通り、日本で金融の話題といえば円安が問題になっているのだが、確かに資産運用と無縁の生活をしている方にとって円安はデメリットでしかない。とはいえ生活を資産運用に頼る方にとっては、大いに気になるに違いない。ところでメディアの記事によると農林中金が売却したのはアメリカ、欧州を含む国債と書かれていた。いずれも停滞する日本の金利に比べれば、何百倍もの水準で、しかもいずれの通貨も、日本円に比べれば、これ見よがしの高値なのだ。要するに高い金利の債券を高い為替レートで売却できたとすれば、きょうび債券運用で損失などありえるのだろうか。考えられるとすれば債券保有で失敗したというより、金利上昇を見込んで行った無理なトレーディングにあったのではないだろうか。
つまり、この先も金利が上がり続けることを期待した売買をしていたが、これを請け負ったトレーダーが金利の動向を見逃してしまったのか、これなども可能性としては在り得えても、納得できるものではない。とはいえ投資の世界では損切や軟ピンなど当初の損失は覚悟の上で、将来の利益を取りに行くという手法は珍しくない。そうはいっても、今回売却されたのは国債という投資の中では最も手堅い資産であり、通常先進国の債券であれば、運用に対するリスクは、ほぼ為替の動きぐらいしか考慮しないだろう、ところがこのニュースにはこの常識が通じないのだ。
さらに謎なのが売却した資産を、その後収益性の高いCLOに切り替えるという恐ろしい記事もあった。CLOとはローン担保証券という外側からは、誰が債務者なのかハッキリしない債券取引で、国債に比べればその信用力はありえへんほどの差になる。たしか先頃話題になっていたクレディスイス銀行の事件もAT1というCLO債券取引の一種が原因だったはずだ。
そしてもう一つは、1兆円以上の損失が見込まれるこの取引を何故、農林中央金庫が急いで行わなければなかったのかだ、この解釈として自己資本比率というバーゼル規制がこれの原因という見方もある。とはいえ海外債券をそのまま自己資本に組み入れる場合は、マーケットリスクをもとに計算し直すことで資産に組み入れることが可能になる。では一体このことが、リアルにこれほどの損失を計上しなければならない理由になるのか、私にはこれ以上の考えが及ばない。経理に詳しい方、あなたの出番です。