思考ラボ
2024年 8月30日 デジタルは敵か味方か?
このようなことを言い出すのは、いかにもデジタル社会に乗り遅れた世代のようでもある。おそらく若い方にデジタル技術は敵だなどと言えば失笑されてしまうかもしれない。私も短期メモリーが確りしていた時は、デジタル技術が疎ましく思うことはなかったのだが、OSの切り替わりなど、それまでのデジタル環境が一変してしまうようなことが起こる度に、後輩がデジタルを使いこなすスピードにはついていけず、結果的に私の中ではデジタルは敵という認識が強くなってしまった。
とはいえデジタルが現代のような高齢化社会には必要不可欠な技術であることも痛感している。さて、現在政府の肝いりで推進を図るデジタル化の取り組みだが、デジタル化の根幹にあるネット社会での評判は、あまり良くないというより、むしろ推進反対の声の方が大きいようにも感じる。それは何故か簡単に言ってしまえば政府の信頼ということになるのだろう。
そうは言ってもこのような問題は今に始まったことではなく、住民基本台帳が誕生した時点ですでに問題視されていたのだ。そしてこの問題には大きく2つの問題点がある、一つは基本台帳の管理体制で特に今でも問題になるのは、ハッキングという外部からの侵入に対する不安だ。そしてもう一つは、この仕組みを政府が利用し国民生活の自由度が脅かされるのではないかという懸念だ。
つまりデジタル化が前に進まないのは、これらの問題点に政府がなんら回答を示さないでデジタル化を進めていることにある。本来であれば、デジタル化は移動や複雑な手続きに対応が困難な高齢者にとって救いの技術になるはずだった。その技術が20年以上の歳月を経ても、始動時からトラブルを発生させ、国民生活の自由度についても緊急事態になれば保証の限りではないとなれば国民の理解は望むべくもないことになる。
つまり、このような制度を推進するためには、このような懸念材料に対し政府は誠意をもって対応することが求められていたのである。ところが、これに対する政府の対応は、国民の理解を求めるというよりは、お金の力に解決を委ねるポイントのバラマキだった。さらに悪手だったのは、国民の健康を脅かすことにもなりかねない健康保険証との合併を無理やり推進させることだった。果たしてこのようなやり方に国民は理解を示すことが出来ただろうか、結果は膨大な予算を積み上げたにも関わらず溝は埋まっていないというのが現状ではないだろうか。
さてこのように国民の最もセンシティブな情報を扱うためには、国内での安全確保は勿論のこと情報の暗号化技術や通信インフラの安全性確保はこの取り組みの大きな課題となっている。要するに情報管理を徹底するためには、そもそも通信の基盤であるNTTの通信インフラを国の管理から外すわけにはいかないだろう。そして今回のデジタル化の要である保険証や免許証など政府発行の証明書の統合については、これを利用して国民の自由度が奪われることがあってはならない。この心配を政府はきっちり受け止め、これにより国民が不利益を被ることの無いように、きっちり明文化して運用のための法整備を進めるべきだろう。
ではこのようなデジタル化の推進をもっと幅広く推進する方法にはどのような取り組みが考えられるだろうか、私はこれを納税の手段として使うことによって、新たな需要が見込めるものと思われる。たとえば現在行われている政府の生活支援対策には、民間企業の経理に対し大変な負担を強いることになっている、というのもGOTOやインボイス制度など政府の支援策には現場や企業への事務負担がとんでもないことになっている。これにより就業者の健康被害が出ているケースも出ているくらいだ。
このような事務負担を如何にデジタル化により軽減できるかということが、デジタル化推進のための強力なモチベーションになることは言うまでも無いことだろう。
そこでデジタル化推進のために、企業、或いは個人の事務負担軽減につながる所得税控除の申告にこの技術を利用できないかと考えた。つまり企業で言えば社員の給与から税を直接徴収する代わり、企業が所得税控除の手続きを代行していたのだが、これからはデジタル技術を利用し個人が所得税の納税を行う仕組みを構築することにある。このためのツールとしてスマホ決済の利用促進が重要になる。その取り組みとして最初は所得控除の利用についてこれを行ってはどうかと考えている。
例えば、配偶者控除や保険料の控除をこれにより個人が直接行うことにすると、いちいち社員が証明書の到着を心配する必要もなくなるのである。具体的には、保険料の控除であれば、保険会社は顧客に対し証明書の発行をするのではなく、控除になる金額を計算しポイントとして顧客に返す、これにより納税者は控除の額を簡単に知ることが出来るだろう。或いは、今国会で大問題になっている政治資金についても寄付金がすべてこのようなスマホ決済により行われれば、パーティー券のような経理による不備も起こらなくなるに違いない。このような税金控除の対象となる団体個人が領収書と同時に税金控除のポイントを発行できるようにすれば、これに掛かる事務負担はかなりの部分軽減され、不明瞭な経理が行われることも無くなるに違いない。つまりこれまで政治資金集めのパーティーが盛んだったのは、これにより秘匿性の高い資金が簡単に集められたというメリットがある。もしこのようなスマホ決済による政治資金集めが主流になれば政治資金の透明性は格段に上がるのである。