思考ラボ
生き物は楽園に住むとどうなるのか
ネズミに水も食料も充分与え外敵もいなかったら、ネズミの楽園が出来るのかそんな実験を、アメリカの動物行動学のカールBボーン博士が行った「ユニバース25」と言うらしいのだが、このことは昨日YouTube動画の「ゆっくり解説」で知った。結構ショッキングな内容だったので信仰心に厚い人などには、あまりお勧めできない記事になると思う。
実験の内容はネズミのつがいを写真のような空間に入れて、水と餌を与え続ける。放射状に見える帯はネズミのいる場所を特定するためのものらしい。このような実験を25回も繰り返した結果はいずれも絶滅という恐ろしい結果になったようだ。この実験では閉鎖的な空間からくるストレス以外、すべての不安要因は取り除かれ、喰う、寝る、遊ぶの自由な楽園が出来上がる筈だった。
では実際ネズミがどのような行動をとったのか、この実験によると3つのステージに分けられるそうだ、まずは順調に繁殖が行われ個体数が増えていくステージ、次に繁殖がピークに達するステージだ8匹から始まったつがいは、とうとう2200匹にまで達したが、ピークを過ぎると今度はネズミの数は減少に向うステージが来る、この原因は産後の死亡率が極端に高くなったことと、あわせて出生率が減ってくるために引き起こされる、恐ろしいことにこの現象は、どこかで下げ止まることがない。とうとう最後の1匹が死ぬまで回復に向かうことが無いのだ。
一般的に見ると個体数の増加が、ネズミの超過密状態を生み、そのストレスから個体数の減少が起こったと考えられるが、それが原因だったとすると、収まりの良いところで止まってもいいようなものだが、実験ではそうはならなかった。結局25回の同じ実験のうち例外は起こらなかったということだ。
さてこの実験の最も恐ろしいところとは何だろう、もともとこの実験はネズミの楽園を創ったらネズミはどのように行動するのかという実験だ、つまり飲み食いに困らず、天敵もいない環境がネズミに何をもたらしたか、ということだが結果は絶滅という、なんとも救いようのない結果になっている。「人はパンのみに生きるにあらずと言われるが、ネズミもチーズのみに生きるにあらずだ」
ところでこの実験にはもう一つ面白い結果が観測されている、それはネズミが勝手にグループを形成して、その中でヒエラルキーのピラミッドを創ってしまうことだ。つまり、偶然出来たネズミのグループにも人間社会における階級と同じ序列が観察されたそうだ。
そのピラミッドは4つの階層から構成されていて、まずはピラミッドの頂上を形成する支配的階層、そしてその頂上をいずれ目指そうとする次のグループ、この2つの階層はいずれも好戦的で支配欲が強い、その次に来るグループは戦いを好まないグループだ、支配欲は薄いがグループに帰属しようとする社会性は強い。最後はどのグループにも関心を持たないタイプ、いわゆる引きこもりのような行動をとるグループだ。実はこのグループが最も個体数が多いというピラミッドの特徴になる。
ようするに、このような他の個体に興味を示さないグループが増えると生殖という行為も自然と困難になるわけだ、これはネズミの実験のことだが、この実験がすべての生き物を通して言えることだとしたらどうだろうか、たとえば今現在日本の出生率は少しづつ下がっていて留まることがないようだ。つまり、実験でいう最後のステージではないのか。
もしこのような危険な状況に置かれた場合、滅びることを回避するためには、2つの道が用意されていると思う。1つは潔く楽園を出ること、旧約聖書には失楽園の話がある、いっそのこと野生に戻り、ハラハラドキドキしながら恋に焦がれる世界に身を置くこと。
または、引きこもりの世界に身を置き、存在の本質に目を向けて、「所詮この世界は仮想の世界だ」と割り切って滅びも辞さない覚悟を決めること、のいずれかの選択を迫られるかもしれない。改めて周りを見渡すとすでに日本は、最後のステージにさしかかっているように思える。「これでもいいのか」