今昔問答
2025年 5月9日 選択の時
今朝はウエストミンスター寺院における戦争犠牲者の追悼式典の様子がワールドニュースで放送されていた。日本人にはあまり馴染みがないが80年前の今日は、ドイツが連合国軍と無条件降伏の調印をした日とされ、この日に合わせてヨーロッパからロシアに至るまで平和を祈る日となっている。これに合わせロシアから3日間の停戦が呼びかけられ、さらに本日アメリカによる30日間の停戦が呼びかけられた。
さてもしこのアメリカの仲裁による停戦が不発に終われば、次にアメリカはNATO脱退の手続きに入ることは避けられないだろう。とはいえ鉱物資源協定の調印があったばかりではとなるが、ウクライナが消滅すれば今度はロシアとの交渉になるかもしれない。とにもかくにもアメリカが撤退した状態でNATOがウクライナを守り切れるかといえばそれは夢物語に近い。というのも5月18日に行われるルーマニアの大統領選はNATOの対ロシア戦略の肝となるはずだが、5月4日行われた大統領選では親ロシアの極右政党が40%以上の支持を得ていた。この状況を地図で確かめて見ると黒海から地中海に掛けての海域は親ロシア国で囲まれることになる。とはいえ地中海の出入り口には今もEUに加盟するギリシャがあるのだが、以前からデフォルトの危機で騒がれていたこの国は、これからEUの支えとなってくれるだろうか。
さて改めてここでギリシャの歴史を辿れば真っ先に思い浮かぶのは西洋と東洋を繋ぐ大帝国を創ったマケドニアの王アレキサンダー大王が思い浮かぶ。この大王のシンボルといえばライオンであり、ベネチアのサンマルコ寺院との結びつきも噂されている。しかも本日誕生したアメリカ出身のローマ教皇の名前は、偶然かも知れないがライオンの意味を持つレオが使われている。と言う事はEUがこの先もアメリカと対立を深めればアドリア海の覇権は大丈夫と言えるだろうか、こうなると中央アジアから中東、アフリカまでの海域でEUは海の安全が保障できなくなる可能性がでてくる。
さてこのような世界情勢の中、日本はアメリカ政府の政策とはまるで逆行する態度を示している。例えばアメリカは脱炭素への取り組みを改め太陽光パネルや風力発電などの推進を改めようとしているところだが、日本は、この技術に関わる企業がほとんどないにも拘らず、これを推進させようと他国に2兆円以上の資金を投入しようとしている。このような政府の態度により改めて今回行われた日米関税交渉でも主力の自動車産業に対して何ら成果を得ることが出来なかったらしい。つまり今の政府ではアメリカとの交渉事は成立しないという事実を日本国民は重く受け止めるべきだろう。
因みに昨日は日本の防衛問題について触れたところだが、国会議員が自分の保身も顧みづあのような発言をされたのは、日本の現状を憂えばこそだろう。要するに日本は自分たちが守らなくてもアメリカが守ってくれるという幻想を一刻も早く払拭したいとの思いではないだろうか。
さて自分の国は自国で守らなければならないとする根拠は1951年のサンフランシスコ講和条約により、既に日本は主権が認められていると言う事にある。つまりこれにより領土、領海、国民の生命の安全を自国の裁量で決定し得ると言う事なのだが、これを担保するための武装が認められなければ独立は絵にかいた餅になる。
これについても軍の保有は世界の共通認識であり現在の日本国憲法はこの常識に反している。早い話が1946年GHQ占領下で制定れた現在の日本国憲法は、この時に当然見直されるべきだった。ところが時の政府は、占領下の憲法を傘に着て国防の責任をアメリカに押し付けてしまった。とはいえこれにより、朝鮮やベトナム戦争への参加を回避できたことは否めないが、この時の状況と現在の世界情勢を同じものとすることは出来ない。
というのも現在のアメリカはこれまでの政策を変更し革命的な経済成長を模索しているところだ。結局アメリカが、自国の財政状況により日本の防衛まで請け負うことが出来ないと言われてしまえば、独立国の日本は軍事機能を持たない丸裸の状態になる。
さて冒頭ウエストミンスター寺院の式典について記述したところだが、イギリスではこのように国家を挙げて命を捧げてくれた方々に敬意を示している。ところが日本の現状は、主権国家の理解が国民に浸透せず、未だに彼らに敬意が払われないばかりか、犯罪者扱いをするものまで後を絶たない。このことについても軍事が国家主権を担保するための最終手段だと言う事が、国民に理解されていないために起こる社会現象で、要するに軍事は違憲というもっともな理由なのである。
話を昨日の沖縄戦に戻せば、ひめゆりの塔の最も悲惨な場面は日本軍が最後の戦いに挑み部隊を解散させてしまったところから始まる。つまり戦場においての武装解除はこのような悲劇の要因になるのだ。しかもこのことは沖縄戦ばかりではなく満州から本国に引き上げようとした無抵抗の市民においても、残忍な暴力の犠牲にされてしまった。このようなことを理解していた陸軍の将兵は軍規を無視してまでも、武装を解除させず市民が退避し終わるまでその安全を守った。ここで何を言いたいかといえば、相手国の良心を信じて武装を保持しないというのは世界的常識とは相いれない暴挙である。
つまり主権国家のあるべき姿は、万が一にも日本が安全を脅かされた時の備えを怠らないことであり、それに備えるのは世界の常識である。さらに付け加えれば今の政府による政治は、世界情勢を見誤っておりむしろ戦争継続を促す勢力に加担している状態と言える。国会が国の繁栄を考えない人たちに支配されたままでは、国民の安全や繁栄はない選択の時は来ている。