今日は好日
2022年 5月28日 巣穴の引っ越し
先ほどTV番組でエゾリスが巣穴を引っ越すところを紹介していた。初めて知ったがリスは何度か巣穴を引っ越すものらしい、番組では外敵やカビなどによる感染症から家族を守るために、このようなことを繰り返すらしいのだが、住み慣れた場所を変えることは、自然に生きる獣にとっても大変な事らしい。
いつものように見たのは番組の途中で、親リスが杉の巣穴から顔を覗かせるところだった。親リスはほどなく巣穴から外に飛び出し、逆さ向きにに木の幹にしがみ付くと、あたりをせわしなく窺っていた。周りの安全を確認し終えたのか、再び自分の這出でた巣穴を覗くと、そこから何頭か別のリスが外を窺っているようだった。おそらくはこのリスの子供たちらしい。
最初の一頭が顔を覗かせるとこの親リスは、すかさず捕まえて外に引きずり出し、自分の手と顎を使って手際よく子リスを口にくわえ、下向きに体制を変えると巣穴からせっせと運び出していた。
ところが、何頭か移し終えた中には、やはり抵抗の激しい子リスがいて、親リスが巣穴から体を引き離そうとするのだが、その子リスは足を巣穴のふちに掛けて頑なに巣穴を離れようとしないのだ。そんな様子を見ながら私はとても微笑ましく感じてた。なぜか人ごとには思えない親しみが湧いてきたのだ。それと同時に私の頭には「安心して親リスに任せなさい」というような言葉が浮かんでいた。
おそらく子リスにとっては、この住み慣れた巣穴の環境がこの世で最も安心なところだと感じていたのかもしれない。一方外界を知り、経験を積んだ親リスからしてみれば、元の巣穴に留まることに、むしろ危険を感じているということなのだろう。
ところで、この結果はどちらの選択が正しいと言えるのだろうか、番組で紹介されたリスに関していうと、結果はフィフティー・フィフティーと言えるが、エゾリス全体で生存の可能性を考えると親リスに分があるのではないだろうか。
さて私がこの番組から強く感じたのは、エゾリスの生態についてではない。今見たリスの親子は明らかに生命の危険を感じてそれぞれの立場で最も安全な行動に及んでいるということだ、いずれも「生命を維持したい」という切なる思いがそれぞれの意識の根底にあるのだと思う。
我々人間はともすれば命に対して特別な意識を持っているように感じるが、ひた向きに命を惜しむ気持ちには、人もリスも変りがないないのだと思う。また命が危険にさらされるということは、これほどのドラマを我々に見せつけて如何なる感情も嵐のように揺さぶってくるのだ。命とはかくも切なく我々の目の前に立ちはだかっている。
とはいえその昔、このようなドラマを心から楽しむ禅僧がいた「雨降らば降れ、風吹かば吹け」
そして最後は「死にとうない」・・・チーン