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今日は好日

2022年12月3日gallery,今日のできごと日々のブログ

2022年 9月1日 無言館

昨晩24時間テレビのドラマ「無言館」を録画で視た。私はあまりテレビは視ないので妻がわざわざ録画しておいてくれたのだ、無言館についてはNHKの日曜美術館で何度も取り上げられていたしブログにも記事を載せた記憶がある。表現を志すものとしては発表の場が与えられた、ということに最大の喜びを感じるものだ。館長や野見山画伯のご尽力に賛辞を贈りたいと思う。

さてドラマについても最後まで丁寧に作られた良いドラマだと思う、驚いたのは俳優陣の豪華さだ、私などはいったいどれほどの経費が掛かったのかと心配になるほど、チャリティー番組の枠を超える力の入れようなのだ。なにせ寺尾聡と浅野忠信が主役だ、2人とも剣豪の役が似合う存在感の半端ない役者で、この2人が画面に収まっているだけでも絵になってしまう。

ところで私がこのドラマから受ける印象は、何と言っても絵を取り巻く人情の暖かさだ、それにも増して夭折した画家の無念さと、寄添ってくれた周りの思いが日の目を見ることが出来たことは、このドラマの果たした最大の成果と言える。ちなみにこのドラマが放送された翌日、無言館は大変盛況だったようだ。

ところで無言館は大東亜戦争で命を落とされた、画家の作品を展示しているようだが、学徒出陣で出征された学生は画学生ばかりではない、あらゆる方面で若者の希望が、この戦争によって失われてしまった。それほど取り返しのつかない傷跡を残すのが戦争というものだ。ところがその過ちは世界のどこかでいまだに繰り返されている。私はそこに疑問を感じてやまないのだ。

とはいえこのドラマは画学生の作品を通して夭折された画学生の思いを現代の我々に伝えているが、それ以外の学生の思いはどう受け止めるべきなのか、また学生以外にも自ら志願して兵士となった若者もたくさんおられるのだ。残念ながらその思いを今から一人づつ辿ることは不可能に近いことだと思う。

そんな複雑な思いの中で私が一番悲しく思うことは、純粋な気持ちで国を護るために命を捧げた若者たちに対し、戦争犯罪者などという汚名を着せてしまうことになりかねないことだ。なぜなら、戦争が犯罪であれば、どれほど下級の兵士であっても同じ犯罪に加担したと言っていることと同じことになるからだ。こんな議論を我々は70年以上も続けているが、いまだに何の解決も見られない。そんなことを解決しないまま防衛費の増強が話し合われているのは一体どういうことなのか。

このような実態を見ると当時の兵士より、今自分たちが頼ろうとしている自衛隊の人たちの方が、よっぽどやりきれない気持ちでいるのではないだろうか。いざとなっても蓋をされた銃を持たされ敵前に差し出されるのだ、挙句の果てに事と次第によっては、戦争犯罪者の汚名を着せられてしまう、これが現代日本の実態ではないだろうか。

人は過酷な状況に置かれればおかれるほど、死ぬときくらい自分を肯定して死にたいと思う、せめてそういう思いを汲み取って感謝をささげることが、名も知れず去っていった人たちへ、我々のできる供養ではないだろうか。

犬死などと言われて喜ぶ魂などいない、皆誰かの役に立てくれたと感謝されたいに違いなのだ。

最後にドラマの終わりに登場する、日高安彦さんへの彼女の思いが浮かんできた。

「逢いたくて 日は沈みても 月を待つ」