今日は好日
2022年 9月2日 人の命と蠅の命
今朝何気なく、俳句を平和の架け橋にと題されたサムネイルを見つけた。このイベントにはウクライナ、ロシア、ベラルーシなど現在交戦中の市民が、俳句を介して平和の交流をはかっているらしい。
そしてそこで綴られているのは過酷な境遇にありながらも、現実を受け入れ生きるという暮らしがある。そこには決して他国を恨んだり非難するような表現はない。ひょっとしたら世界で最も短い歌には、我々にありのままの現実を平和な表現に変化させてしまう力を秘めているのかもしれない。
ところで、私が俳句の良し悪しを言える立場にはないが、彼らの俳句の中で特に気になった俳句があった。
それが「爆撃の遠音に温む縁の春蠅」というアンナ・ビアズミティノバさんの句だ。ロシア語での投稿だが立派な日本語訳がついていた。
私が驚いたのは、爆撃という極限の状況に置かれながらも、彼女の視線は縁側の蠅を追っていたことだ。そこから感じられることは彼女の心の静けさと、爆撃という事態の前では、なすすべもないの命の儚さだ。
彼女の置かれたその瞬間には、人の命も蠅の命も区別はない。爆弾が目の前に落ちればすべては消え去るしかないのだ。
これほどの過酷な環境にあっても暮らしは静かに続いてゆく、彼女がこれからの暮らしにも安らぎと喜びを見出していけることを祈っている。