今日は好日Vol.2
2023年 5月15日 平時と有事
昨晩、苫米地英人博士の改憲問題についてというニコニコ動画を覗いてみた。動画には歴史観や思想哲学、法律などあらゆる知識が盛り込まれた内容だ、しかも博士の経歴を見るとこの動画に異を唱えることは馬鹿を世間にさらすように映るかもしれない。
がしかし、すでに私はこのブログで何度も改憲を記事にしてきた。このことはこの動画を見ても変わることがなかったので、私の意見とこの動画に述べられていることの違いについて、これから明らかにしたいと思っている。
まず初めにお互いの意見の基になる現状認識については氏の認識と変わるところがない、とはいえ大きな違いは私の学識の無さだ。ということで、この勝負は初めから私には分が悪い。にもかかわらず、あえて私の意見に賛同していただけるかもしれない超少数派の方のために意見を述べたいと思う。
法律の優位性
この動画の凄いところは憲法と法律の違いまた国際条約の認識から丁寧に述べられているところだ、それほど素人に配慮した動画といえる。ところで動画では法律には優位性というものがあることを述べられていた。優位性とは、1つの事象で異なる法律がある場合どちらを優先的に考えるかだ。
国際条約>日本国憲法>その他の法律
通常国際的にはこのような法律の認識にある。このように法律は外面がより優先されることが国際的にも常識とされている、でなければ国と国との約束など成立しないからだ。もしこれに異を唱える者がいるとすればそれは鎖国論者となる。
つまり国際的な常識が日本の法律に影響を及ぼすことを日本はすでに受け入れているのである。このような世界常識の中で認められる当たり前の権利が自然権と言われるものだ。この権利には個人が生きるための権利も生存権としてきっちり謳われている、注目してほしいのは、このために正当防衛という考えが認められることだ。日本は他国に対し武力行使はできないが正当防衛は可能だとする自衛権の根拠がここにある。
さて話を動画に戻すと国の主権はどう担保されるかといえば国の主権はその国の軍が維持するということも世界の常識である、逆に主権は他国の軍によって維持されるという考えは議論に値しないほど非常識なのだ。もしこのようなことがあり得るとすれば、同盟国の政治が乱れて市民の生命が侵される危険がある場合で、これは人道に対する支援にあたる。とはいえ日本がこのような状態にあったことは、いまだかつて一度もない。この点について動画ではあまり強調されていなかったが、そんなことは言うまでもない話なのだろう。
平時と有事
ところが、次に示されたテロップには平時と有事の違いについて書かれていた。これも国際的な常識から言われることらしい、つまり戦争中は平時とは全く違った状態であることが説明されていた。この状態になれば一般的に国の運営は軍が行う、平和時の外交は停止になり、代わって軍による軍事行動が外交の代わりとなる。要するに、言葉でのやり取りは武力のやり取りに代わるという説明だ。つまり武力行使は国として行う外交の一部とみるのが国際社会の常識らしい。
統帥権
次に、動画で問題とされていたのが政府の改憲案では緊急時に自衛隊の最高指揮権が総理大臣に委ねられるとあるが、このことは文民統制の逸脱になるという論が展開された、この説明を聞いた時の私は目の前で月面宙返りのウルトラCを見たような気持ちになり、あわてて動画を巻き戻してみた。
間違った解釈かもしれないが、内閣総理大臣が有事の際に自衛隊のトップになるということはシビリアンコントロールを失う、なぜならその時点で総理大臣は有事における軍人に等しい権力を持つと述べているようだ。もしこの通りの解釈でよいのならこの論拠にはかなりの飛躍があるのではないだろうか。
私は自衛隊が軍ではないという議論がそもそもおかしいと言っているのだ。もし自衛隊が軍ではないとすれば、この国際常識である平時と有事の区別も日本では成立しないことになる。つまり日本の交戦権を否定する現憲法では日本は常に平時のままなのである、もしかりに他国の武力攻撃があったとしても、これは他国からの市民に対する組織的な殺人行為に他のならない。ようするに他国の戦闘行為は日本国内法では刑法で裁かれることになり、もしそんなことになれば、日本人を殺害した兵士たちは戦後も殺人罪で日本の警察に永遠に追われることになるはずである、つまりこの解釈が成り立つのであれば行政のトップである内閣総理大臣がその指揮を執ることに問題がないことになるのではないだろうか。
日本の貢献と軍事同盟
また、この動画では国連における日本の立場についても触れられていた、ここに記されている敵国条項はこれまで日本が果たしてきた貢献からすれば不当な扱いではないかというものだ。この条項に対する解消を求めるために博士は、この軍事同盟からの脱退を提案されていたが、私もそこには賛成するところだ、とはいえ再加入することでこの条項が廃棄されるという根拠にはならないのではないだろうか。
この同盟はあくまでもWW2の戦勝国で創った軍事同盟で、ここに敗戦国である日本が加わり発言権を持つことはやはり考えづらいのだ、仮に常任理事国になったとしても、現憲法下で日本が軍事同盟で果たすことのできる軍事的貢献は限りなく少ないので、現憲法維持を述べるのであれば、軍事同盟には加わらないが正しいのではないだろうか。因みに私も日本国の意に反して戦闘に巻き込まれる可能性の高い軍事同盟への参加は反対の立場をとっている。というのも戦争行為の主体となれない自衛隊は、偶発的にも集団的自衛権を介した戦闘があれば、自衛隊には戦場において統帥権がない。つまり他国の意のままに自衛隊は行動せざる負えなくなることになる。私はことについて、日本国がこの問題を先送りできない理由と考えている。
不思議なことにこれだけ詳細な見識をお持ちなのにもかかわらず、博士はこの点には触れられていなかった。そして話の飛躍はさらに続き、総理は他国金融組織の傀儡ではないかとも発言されていた。確かに防衛大綱の中身が現場の意見を反映したものかといえば、私も甚だ疑問に思うところがある。しかも敵地攻撃能力と言いながら風船一つ撃墜できない現状を見れば、防衛大綱とはまるでコメディーを視るようなのである。
緊急事態
私はこのような現状であることからも緊急事態を定義する前に、国際常識である国軍が憲法に明記されることを望んでいる。そして軍法の制定をもって緊急事態に対応することが自然な流れなのではないかと考えている。また、いかなる法律も時代に合わせて変化できることがリアルな民意を反映させることになると考え、そのように憲法が国柄を表現するものである以上憲法が、時流と齟齬のできない工夫も必要と思われる。
というのも巷では強力な武器を保有することになる軍隊には当然警戒感が付きまとう、しかしながらこれに対抗できる手段は刑罰を強化することではなく国を思う気持ちを育てることではないだろうか、つまり教育の問題なのだと思う。これまでも軍を巻き込むクーデターがないわけではない、とはいえその理由をたどれば、市民の貧困に対する不満など、政治の腐敗が軍の介入を招いた場合が多いのも事実だろ。このような懸念に対し、動画では有事の際の決定事項は総理大臣ではなく国会が決めるとしているが、これでは動画の最初に説明していた3権分立の考えはどうなったのだろうか。動画のテロップでも行政の府は内閣だと憲法に規定している、なぜ内閣は信頼できなくて立法府の国会が信じられるのか、これでは間接選挙は信じられないと仰っているようにしか伝わってこない。
陸自は減らしても構わない?
さてこの動画でさらに違和感を感じるのは陸上自衛隊の削減である。確かに海で囲まれた日本への侵略は海での戦いから始まるだろう、おそらく博士の考えでは水際で負ければ戦闘は終わりだという考えなのだと思う。ところがそのような作戦で負けを重ねていったのが太平洋戦争の歴史ではなっかっただろうか、その後に起きた台湾やベトナムでの戦争は圧倒的な戦力差にもかかわらず陸上での持久戦が勝敗を分けたといえなくもない。何よりも我が国の1憶2千万人以上の市民を14万人しかいない軍によって守り切ることは出来るだろうか、ただでさえ日本の領土は表面積が意外と広く入り組んでいるのだ、陸上の戦力を減らして日本の安全が維持できるというのはどのような軍略を用いれば可能になるのか動画の続きがあればぜひ拝聴させていただきたいと思う。