2023年 賢者の憂鬱
昨晩,坂本龍一氏の訃報が飛び込んできた。ほんの少し前に氏に関する記事を書いたばかりで、正直、今も私は呆然としている。いずれにしても氏が、世界を魅了しつづけるアーティストとして不動の足跡を残されたことは間違いない。一度そのメロディーを耳にすると、耳にする以前から、ずっとこの世に存在していたメロディのような錯覚を覚える。例えば二胡で演奏される映画ラストエンペラーのテーマ曲は映画の世界を飛び超えて清朝や紫禁城の壮大さを聴衆にイメージさせてくれる。
残念ながら彼が人生の最後をかけて反対した明治神宮の森を護ことはできなかった。そこには縄文時代より自然との共存をもっとも大切にしてきた日本人の叡智があったのだが、そんな思いを現代人の損得勘定で破壊してしまうとは、どれほど恐れ多いことなのだろうか、ただ悲しむより他ない。