G-BN130W2PGN

お問い合わせ先

mail@makotoazuma.com

 

今日は好日Vol.2

2024年1月5日gallery,ようこそ,自作俳句絵画 無意識

2023年 3月30日 日本人が大切にしてきたもの

いまから31年前1992年に、バルセロナオリンピックがあった。その開会式はビィジュアルも音楽も洗練されていて、流石というより正直うらやましくもあった。そんなバルセロナを私が訪れることが出来たのは、それから5,6年たった後のことだった。

そこで乗ったタクシーの運転手さんは私が日本人だと知って、しきりとSAKAMOTOといってご機嫌取りをしてくれた。きっとお客が日本人だと聞けば、誰かれ見境なく言っていたのだと思うが、この運転手さんは開会式のテーマ曲「地中海」の作曲者、坂本龍一のことを私に伝えたかったのだ。逆に考えればそれほど、この開会式はそれほどバルセロナ人の誇りだったのだと思う。

とはいえ私の記憶の坂本龍一といえばYMOのメンバーというイメージが強い、それほどこのグループのデビューは衝撃的だった。残念ながらメンバーの一人高橋幸宏氏がなくなってまだ間もないが、どれほどデビュー当時、このグループの影響力がすごかったかといえば、彼らの登場以来、床屋に行くと必ず「もみあげはどうしますか」と聞かれるようになってしまった。これは当時流行したテクノカットというヘアースタイルの名残だ、マッシュルームカットのもみあげを耳から斜めにきっちりそぎ落とす当時としては、かなり前衛的なヘアースタイルだった。さてこの世界的アーティストも現在闘病生活にあるらしい、その彼が闘病中にもかかわらず、力を振り絞って東京都へ依頼したことが、明治神宮外苑開発による森林伐採の差し止めだった。

以前このブログでも紹介したが、明治神宮は経済的理由から敷地内の森を破壊して重機や資材置き場のスペースを確保するための申請を東京都にしていたそうだ。ちなみにこのことに気づき早々と工事差し止めの署名活動をしたのはアメリカの大使だった。

ではなぜ、この森はそれほど大切な森なのかといえば、ここには人間が作り出した人口の森にもかかわらず、完全な自然体系が成立しているからだ。そんなものが超過密都市の真中に150年以上の間存在している、これはすなわち人類と自然の共生を実証していることでもあるからだ。つまりこの場所は、木材を得るための植林が行われた場所ではないのだ、ここは南方熊楠らにより土壌の粘菌からはじまり、様々な樹木の性質まで考慮されて完成された人口の生態系である、その生態系はこれまで日本にどれほどの災難が、国民に降りかかろうとも、国民の手で大切に守り抜いてきた神聖な場所なのである。

この神聖な森を守りたいとの思いからNY在住の坂本龍一氏は、緑色を多用する都民ファーストの知事に対し明治神宮外苑開発の中止を申し入れた、結果は「それは明治神宮にお願いしなさい」というつれない返事だったそうだ。このことからいえることは、イメージをただ自分たちの欲を満たすために使おうとする人たちと、人類の希望のために行動している人たちとの違いである、結果はやはり、その木にどんな実がなるかで知ることが出来るようだ。我々日本人は古来より日本の限られた国土と共に、ささやかな繁栄を続けてきた。この歴史こそ日本人が祖先から大切に受け継がれてきたものの成果である。いにしえの日本人は水や岩、巨樹などありとあらゆる自然現象を象徴するこれらのものに対して尊崇の念をもって暮らしてきた。

我々日本人は清らかに佇む自然の永続性に感謝をささげ、恐れを抱きながら営々と暮らしてきたのだ。それに比べて戦後の経済だけに従属しようとする暮らしは、一時の繁栄や楽しみを追い求めることを何よりのよりどころにしている。このような生活は、おならのようなものを飽きずに追い求める暮らしに違いない、その後に残されるのは耐えがたい悪臭のみで、希望も何も生まれてこない。

このように考えれば今、日本人が失いかけているのは、お金よりも清らかな心の大切さではないだろうか。臭いおならで神の御座を穢してはならない。