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令和 あくび指南

2024年11月22日gallery,ようこそ

2024年 7月11日 笑う門

笑う門には福来るという言葉がある、そのため健康に詳しい方はこの話にも医学的な根拠があるのだという。私はそれ以外にも精神的な共感ということで社会性の維持についても、笑いには大きな貢献があると思っている。なんだかたいそうな話のようになってきたが、先日放送された落語研究会の録画を先ほど視終わった。前回の録画はうっかり忘れてしまい、絶望的なひと月を過ごしていた。なにせ月に一度の放送を楽しみなのに、このような失敗をしでかすと、その月の思いはどんどんネガティブな方に向いてしまう。

ところで落語は笑うことが目的で見るのかといえば、そう言い切ることは出来ない、笑いはあくまでも話の切っ掛けにすぎず、笑いは落語の楽しさのほんの一部でしかない。とはいえそうだとしても笑いを自由自在に操れる人は、大きな魅力を兼ね備えていることには違いない。そこで今日はここにスポットを当てて落語研究会の記事にしたいと思っている。

まず初めに笑いの定義について言えば、笑いは人間による理想の姿から生まれてくる物ではないということだ。というのも聖書や、経文、哲学書を読んで笑いが込み上げてくる人はまず稀だろう。ではどんな場面で笑いが起こるのかといえば、私はむしろその逆で本人としては後ろめたい思いの共感や、同意なのではないかと思っている。

ではそのような笑いを偶然ではなく積極的に誘発しようとすればどのような技術が求められるだろうか、とくに芸人のように自分の芸としてこの技術を考えた場合はどうなるのか、私が特に考えるのは自己の持つキャラクターと笑いを誘う事象との統合である。この場合様々な笑いの要素から自分のキャラクター全体が醸す雰囲気までを含めて笑いを構築していく必要があると考える。つまり、姿かたちや話すテンポを、笑いのベースと考え、その上に載せる笑いの事象を選択するのである。具体的にいえば、温厚そうな姿でゆっくりテンポの似合う方が毒舌を繰り出すより、少しせわしない態度の方がテンポよく毒舌を吐いて、しかも全く意に返さないと言う方が、親近感がわきやすい。

それとは逆にテンポを落とし、後からじわじわ毒舌が効いてくるような見せ方もできるかもしれない。要するに数ある笑いの事象から自分の持つキャラクターに合う笑いを見つけることだ。

話しを落語研究会に戻すと、この放送は2時間の枠の中に3人から4人の噺家さんが登場してくる。その個性を見ているだけでも楽しめるのだ。ところで落語といえば、その噺は一字一句ほぼすでに決まっている。つまり間に挟む笑わせるところも毎回一緒で、落語研究会ともなれば観客は話の切っ掛けを聞いただけで下げまで頭に浮かぶ方が多いだろう、こうなると毎回同じところで笑わせるのは至難の業に違いない。そんなことを事も無げに出来るところが、噺家による腕の見せ所だろう。

ところで、今回の研究会は三遊亭萬橘氏の開帳の雪隠から始まった。氏の高座を見るとキャラクター強い噺家さんという印象がすぐ浮かでくる。つまり眼鏡や話のテンポまでが噺家さんの個性となって、枕からその世界に引き込まれてしまうのである。勝手なことを言えば、氏のイメージは私の敬愛するイッセイ尾形氏の一人芝居を思わせるのだ。つまりそれほど洗練されたキャラクター性を氏のイメージに感じてしまう。

続いて登場したのが隅田川馬石氏で、お題はお初と徳兵衛だった、私がこの話を聞いたのは5代目円楽氏が初めてで最後の下りは子供ながらドキドキした記憶がある。ところで隅田川馬石氏といえば、五街道雲助氏の一門であり、言い換えれば国宝一門とでも言えば分かり易いかもしれない。なにせ国宝拝する名門なのだが、夫婦別性のごとく一門は同じ亭号を持たないので、ついこのような注釈を入れたくなる。氏の他に同じ門弟では蜃気楼龍玉氏、桃月庵白酒氏が居られる、桃月庵白酒などと言われれば噺家のお名前というよりも、まるでお菓子屋か酒屋のような名前である、そのうえ姿を拝見すれば、観客の期待はますます和菓子屋に向いてしまうかもしれない。もし氏によるまんじゅう怖いの演目があれば、幕が跳ねると菓子屋の前に行列が出来てしまうかもしれない。冗談はさておきイメージの強い噺家さんというのは、やはり並々ならぬ集客力を持っているに違いないのだ。

そして3番目に三遊亭笑遊氏の登場になった。私は落語研究会では初めてお目にかかる噺家さんだったが、話す姿は名人と言われてもおかしくない風格をお持ちの方だった。この時の演目は祇園祭で、特にお祭りのお囃子を競うところはリアルでテンポがあり、このような域に達するまでには、さぞ稽古に励まれてきたことと拝察する、このような古典芸能に触れる機会があるのもまた落語の大きな魅力に違いない。

そして今回のトリは古今亭菊之丞氏の茶の湯でその安定した語り口はトリに相応しい貫録を見せていた。

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Posted by makotoazuma