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令和 あくび指南

2024年9月12日gallery,ようこそ

2024年 9月2日 光のコンダクター

というよりも光の聴衆と言うべきか、先日、日曜美術館で取り上げられた内藤礼展の私が受けた印象だ。どういう事かと言うと、番組を視るまで私は内藤礼氏のことを知らなかったので、番組で映った背中を向けるモデルさんを内藤礼氏の姿だと勘違いしてしまったのだ。その後ろ姿はまるで、交響楽団を操るコンダクターのように見えていたのだが、番組が進み氏の作品が紹介されるにつれ、楽団を指揮するコンダクターのイメージというよりは、むしろ鑑賞者がステージに上がって演奏者と直接対峙しているような感覚になった。

それは氏の作品を見ると、表現の目指すところは自己の生み出す作品に内在しているというよりも、それは元々ある自然そのものなのではないだろうか。というのも、番組から私が特に意識させられたのは、光と時間という直に手に触れることの出来ないモチーフばかりなのだ。番組では国立東京博物館という開かずの間に、開館以来初めて光が差し込む様子が映し出されていた。そこに現れたのは小さく映る鑑賞者とガランとした室内の様子で、この対比は私に不思議な違和感を感じさせていた。展示ではさらにその足元に土器による子供の足型が展示されていて、これにより鑑賞者は、近代的な舞台装置の上にいながらも、いやおうなしに太古の大地と繋がってしまうのだ。

さて番組ではさらに巨大な舞台装置が紹介されていた、それが瀬戸内海に浮かぶ豊島美術館だ。

全景

美術館と言ってもコンクリートのドームに穴の開いた天井があるだけの施設で、なかに入り込んでもそれ以外何もない空間が広がっているようだ。とわいえ床をよく見ると、どこからか水がジンワリと湧いてきてそれが水滴となり、やがてその水滴は次々床の斜面を転がりだしていく。やがて水滴はぶつかり合い、繋がり合って、まるで床を這う蛇の如く身をくねらせながら、大きな水溜まりに吸い込まれていく。そこえ光が差し込むと、反射して天井の表情を次々変えていくのだ。このような仕組みを体験しながら鑑賞者は何時しかその面白さに時間を忘れてしまうのだ。そしてその面白さは光の演出ばかりではない。天井からぶら下がるひものような仕掛けは、時折吹き込む風によって形を変え、館内に様々な形の影を落としていく。要するにここに登場するモチーフは自然そのものであるにも拘らず、巨大なコンクリートの仕切りによって、それまで見過ごされていた自然の美しさをさらに際立せているのだ。自然をより味わうために自然の中にあえて仕切りを付ける、私が初めて出会ったアートのコンセプトだ。

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Posted by makotoazuma