令和 あくび指南
2024年 11月20日 気づけば詩人
ウェキペディアより
一昨日、詩人谷川俊太郎氏の訃報が流れた。日本の著名な詩人ということで各界から追悼の言葉が続々と寄せられている。因みにどんな方だろうと思いウェキペディアを覗いてみた、確かに詩人としての活躍も目覚ましいのだが、そこに納まらない活躍があったことは、追悼を寄せられる方々の多彩さでも偲ばれる。
因みに私が、氏との繋がりを確信できるのは鉄腕アトムの主題歌で、そうなると氏とは何十年のお付き合いということになる。ところでウェキペディアの情報から改めて氏の足跡をたどれば、果たして氏は、初めから詩人になるという志を持っていらした方なのかと考えてしまう。というのも処女作20億光年の孤独という詩集も17歳から書き溜めた詩を21歳で出版したというものでありながら、当時から氏は文芸の世界で身を立てようとしていたのか疑わしく思えるのだ。というのも、大概そのような志を持つ方は、学歴や肩書にこだわるものと思うのだ。ところが、氏の経歴にはそのようなこだわりが全く感じられない。例えば処女作の詩集を発表して間もなく、「愛のパンセ」というフランスのパスカルを思わせるエッセー集を発表している。このことから感じるのは、氏の興味には際限がないということで、その興味は宇宙や物理学、更には神学や思想哲学にまで及んでいるからだ。
このようなことから氏の生涯を辿ってみると、どうみても自分の思うところだけを、わき目も振らず突き進んできた人のようで、そうだとすれば詩人という肩書さえ、後に世間から貼られたレッテルなのではないかと思ってしまう。
このような視点から見れば、氏はあれほど多才でありながら、その作品はまるで水道の蛇口を開くように世に溢れ出て、時代の潮流となっていったことも納得できる。つまりこの結果はコントロールしきれないほどの情熱が招いた当然の結果のようにも映るのだ。
さて具体的に氏の才能がどれほど多才であったかを挙げれば、音楽や演劇そして映画の脚本など、これまた限りがない。私はその膨大な経歴の中に市川崑監督による「股旅」という映画の脚本をされていたことを見つけて、思わずニャついてしまった。その理由は、この映画は登場する萩原健一氏や尾藤イサオ氏の名演がすぐ目に浮かぶほど私のお気に入りだからだ。こんな映画が1500万円の低予算で撮られていたとは、改めて信じられない思いになる。というのも、この映画におけるカメラワークや、こだわりの美術も注目に値するものだが、やはり最後まで視聴者の心を離さない脚本の見事さは、これ抜きにこの映画の成功は語れないだろう。
そしてこれほど多才な創作意欲が90を超える歳まで何ら衰えることがなかったということも脅威的なことである。つい最近でも「じべた」という絵本が、今から3年前、2021年に橙書店から発刊されたばかりだった。この絵本は、黒田征太郎氏という日本の高度経済成長時代を象徴するイラストレーターとのコラボによるものだが、谷川俊太郎氏が最後に残したかったメッセージがこの絵本に集約されているように私は感じている。これで谷川俊太郎氏はやっとじべたに戻ることが出来たのだと。