令和 あくび指南
2024年 11月25日 不信感
戦争が収まらない理由には敗北によるプライドの喪失と相手国への不信感というものが隠れている。しかしながら、これにより過去の日本でもサイパンや沖縄戦における民間人の集団自決という悲しい事件が起こっている。このことを現代の我々は当時の人たちは、なぜもっと相手国を信用できなかったのかという思いになってしまう。ところが、降伏すれば必ず悲惨な目にあうという噂が伝われば、市民も兵士も同じ恐怖に苛まれ悲劇的な行為に及んでしまうことは、これからであっても充分起こり得るのである。要するにこの結末を知る我々が、当時の軍人だけに責任を負わせ非難することは、極めて公平性に欠く行為なのではないだろうか。
要するに情報との関り一つで人の命も簡単に左右されてしまうということだ。残念なことに、今でも戦争の続くウクライナ国民に対し停戦について尋ねるとロシアへの不信感が拭えないそうだ。というのも、もしロシアが勝利すれば次はウクライナ全土が狙われるという不信感が根強いからだ。とはいえこれと同じように、いまだに日本でも同じ不信感を持たれる方が多い。それはWW2の終戦時に、日本側はすでにポツダム宣言を受託し戦闘を停止していたにもかかわらず、旧ソビエト軍は日ソ中立条約を破り日本の領土に侵攻してきた。この時、千島列島の占守島においては、陸軍が武装解除の命令を無視し、ソビエト軍に武器を取って挑み、相手に日本の5倍以上の損害を与えた後に、ようやく停戦交渉を行った経緯がある。この抵抗により、スターリンは北海道上陸を諦めたという。このようなような歴史的背景から日本人にはロシアへの不信感が拭えないのかもしれない。
とはいえソビエト連邦はすでに崩壊しコミンテルンが支配する国ではなくなっている。現在はロシア連邦という立派な民主主義国家が誕生しているのだ。このような環境においてウクライナはこの戦争の原因を、もう一度考えてみる必要があるのではないだろうか。つまりこの戦争はロシアの領土拡大による戦争なのかどうか、簡単に言ってしまえばこの侵攻がウクライナ全土の占領を目的としていた侵攻だった場合、近代戦のセオリーから言っても真っ先にキーウを包囲し国家の中枢を制圧することが常識で、その後傀儡政権を樹立させ他国の非難をかわし統治するというのが近代戦のセオリーだろう。実際日華事変における中華民国の首都南京は人口20万の堅固な城塞都市であったが、上海を制圧した日本軍はそのまま進軍を続け9日間で首都を占領してしまった。トラックなどほとんどない、徒歩と馬が頼りの進軍である。ところが機械化が発達した現代でこの戦争は、早3年にも及ぼうとしている。そしてこの戦争の経緯を見ればロシアが占領したのは、初めからドンバス地方のみで、これ以外ウクライナ全土において戦線の拡大は全く見られないのだ。
このことを合理的に説明するとすれば、ロシア側の要求は一貫していて要するにミンスク合意を守れということで、なかでもウクライナのNATO加盟はロシアにとって絶対に看過できない問題といえる。これについてアメリカの次期大統領は、ハッキリとウクライナのNATO加盟は認めないことを宣言しているのだ。因みにミンスク2の合意文書ではドンバス地方各国の独立承認はしない代わり、ここを非武装地帯にするという合意が出来ている。これをあたかもウクライナ全土が非武装中立だと思わせるのは不適切な報道にはならないだろうか。
しかしながら、このような事実があってもマスコミの戦争継続宣伝活動は終わらない。ウクライナ戦争の原因については、ロシアはウクライナの地下資源を目当てにこの侵攻を行っているとして、マスコミはいまだに様々な情報戦を仕掛けている。そのような事を真に受ければ今後も停戦など望むべくもないだろう。とはいえ戦争を一刻も早く終結させるためには、一人でも多くの方がこの戦争に疑問を持ち、戦争継続を思い留まるよう願いたい。
今後もミサイル攻撃の応酬を続けることは、いずれ勝利に繋がる戦闘行為だというよりも、市民生活を犠牲にして人の恨みをまき散らしていることに変わりが無い。とはいえこの件に関しウクライナ国民に何らかの落ち度があったとすれば、それは間違ったリーダーを選んでしまったということだろう。