春望録
2025年 2月25日 和平と日本
読売新聞オンラインの配信によると昨日、アメリカ政府は国連安全保障理事会においてウクライナでの紛争終結に対する決議案を提出したそうだ。これに合わせアメリカは国連総会にも同様の決議案を提出している。またこれに先んじてこれとは別の戦争終結決議案がアメリカ抜きの状態で受理されている。なんと西側と歩調を合わせる日本政府はこれに賛成する立場を取っているのだが、その内容を見れば露軍に対し「完全かつ無条件での即時撤退」と「戦争の年内終結」という内容で、これを現実可能な決議には到底思えないのだ。早い話がこの決議案は今までEUの主張と代り映えがなく、要するにここにある文章は、これまで通り戦争継続の決議文のようなもので、この点誇りある日本がこのような茶番で穢されたことを思うと慙愧に耐えない。
これに対し一方のアメリカより提出された決議案は紛争終結という言葉を使っていることや、ロシアの主張する特別軍事作戦という立場にも配慮した文面でこれを見ただけでも、どちらが停戦について真剣に考えているのか素人でも分かりそうなものだ。ところがよほどうまそうな人参が目先にぶら下がっているのか、今日も真剣に和平に取り組むアメリカのトランプ大統領に対しマスメディアの攻撃が絶えない。
今日見かけたものはトランプ大統領が退陣するまで日本政府は臥薪嘗胆で耐えましょうというトンデモ記事だった。そのような事をすれば危機的状況にあるEU経済やカナダ経済にならって日本経済も復興不可能なほど疲弊してしまうことは明らかだ。例えに出して大変心苦しいが先日来話題になっているアメリカ大統領によるカナダ併合も、実際これからカナダが経済復興のために取り組まなければならない課題を考えれば冗談で済まされない深刻さがある。というのも移民問題による社会的混乱は人権問題や国の主権にも関わってくる問題になる。このなかで民主主義を実現することは、国民がどれほどの覚悟をもってこれに取り組むかにかかっている。がしかしそれより深刻なことは、一体誰がそれを担うことが出来るかなのだ。つまり民意がバラバラになっていれば国が一つの方向に向かって政策を実行することは不可能になるからだ。そう考えると自国の政治が安定するまでの併合という考えはそれほど的外れともいえなくなる。
ところで、かつて強大な経済力と軍事力を誇るロシアに対し、まともに宣戦布告しこれに勝利を収めた国がある。しかもその国には当時、軍事力でも経済力でも4分のⅠほどのしかなかない小国だった、それが日本なのだが、当時の日本人はこの快挙を心から喜ぶことが出来なかったらしい。それよりむしろこの和平交渉を屈辱的と受け取っていたようなのだ。というのも勝敗の内容だけを見れば日本海海戦においてロシアのバルチック艦隊は全滅し、陸上でもロシア軍が主戦場の奉天から撤退しているので戦闘の勝敗だけを見れば無条件の圧勝と言える。とはいえロシアが戦線を立て直し、再び攻勢を仕掛けてくれば日本にこれを防ぐ余力は残されていなかった。それでは何故日本がこの勝利を心から喜べなかったのかといえば、それは仲介に入ったアメリカによって戦後賠償においては賠償金の請求が認められなかったことによる。
そもそも4倍の国力もある国と戦うためにはその戦費をどこから調達するのかという大問題がある。このため経済力すら覚束ない日本は様々な国に借金を申し出るが、それにこたえる国はなかった。というのもこの戦争に日本が勝利するなど常識的に考えれば、ありえへん世界なのである。ところがこのような状況にもかかわらず、この要望に応えてくれたのは個人のアメリカ人資本家だった。これにより日本は現在の価値で2兆円を超える戦費を調達することに成功した。とはいえ借りた借金は返さなければならないのである。そのため、日本にとって賠償金の要求は、日本経済にとっても必要不可欠な要求だった。結局日本がこれを完済できたのは、敗戦後の1980年にまで及んだ。因みに国税庁のホームページには、当時の政府がこの借金に大変苦慮していたことをうかがわせる記事が載っている。それによると、当時の識者による様々な提言が興味深い。読んでみるとマッチを専売にせよという案があったり、笑ってしまうのは名士による売名行為やスキャンダラスな武勇伝を語る人達にも課税しろと言う提言があった。
話は変わるが、今回ロシアとの講和を仲介するトランプ大統領は瀕死のウクライナ政府に対しレアメタルの支配権を要求しているそうだ。一見これを聞いてウシジマくんが頭をよぎってしまうのだが、これまでアメリカが支援してきた資金は、アメリカ国民の血税だという立場に立てば、このように非情な側面も民意からすれば、あって然るべき態度にも感じる。日本人から見てもこれほど民意に誠実な政治家はいただろうか、それにしてもアメリカ金融道恐るべしなのである。
さてこのトンでも記事には台湾有事についても触れていたが、結局次のターゲットは台湾だと言って戦争を煽りたい意図を感じるが、私はこの記事にも述べられている通り、ここで軍事的衝突が起こる可能性は極めて低いと思っている。というのも軍事衝突はお金がかかり勝敗がハッキリ見えてしまうからだ。もしこれに失敗することがあれば、どれほど巨大な政権でもこれにより倒れることは充分あり得るからだ。そんなことをするくらいなら政治家を調略した方が、遥かにコスパに優れている。孫子の兵法の極意はそのような処にあると聞いたことがあるが、その辺のところは革命以降も受け継がれているのではないだろうか。
さて現在周落の一途をたどる日本も、今この状況にあると言っていいだろう。ではこの流れを変えるためには、希望に燃えるアメリカ経済と歩調を合わせる事しかない。そのためには、日本はロシアとの国交を正常化させ南シナ海の海上封鎖に対しアドバンテージを取る必要があるだろう。さらにはインド洋から中東にかけての海上輸送ルートを周辺国と協力し自力で防衛する必要が見えてくる。つまりこれらの海域における航行の自由を確固としたものにする必要があるからだ。つまりこのようなことを周辺国に受け入れてもらうためには、これまでのアメリカ依存の安保体制からは脱却し、周辺国との不要な摩擦を生まない配慮の下で取り組む必要がある。
歴史にもしは無いと言うが、もしバルチック艦隊がベーリング海を通って日本に向っていたとすれば日本艦隊は、あれほど完璧な迎撃態勢がとれただろうか、歴史が変わっていた可能性は無いだろうか。