春望録
2025年 2月11日 150兆円の謎
先日日米会談がもたれ、日本の首相が1兆ドルに上る対米投資を約束したという。これについて巷では日本の首相が初の日米会談において大風呂敷を広げてしまったのではないかと噂されている。それにしても日本国内では財源が乏しく増税やむなしと言っていた首相が、他国に移動した瞬間こんなことを言い出すのは世間を馬鹿にしているのか、何かのマジックなのか、これでは帽子から鳩ならぬ10万トンタンカーが飛び出すくらいのイリュージョンだ。
早速取材記者からその財源について記者から尋ねられると、財源は日本企業に促すというのだ。さてこれを聞いて経団連は涼しい顔をしていられるのかとおもったが、いまのところ経団連が首相の無責任発言を非難している様子もない。だとすればこの謎には何らかの根拠があるのではないだろうか。
これについて私の見方は、この約束はアメリカの要求だったというものだ。何故かといえばこれまで政府が取り組んできた政策は、一連のトランプ革命とは真逆の取り組みでしかなかったからだ。
一番の謎はこの150兆円を首相はどこから都合しようとしているのだろうか。この謎を解くためには、現在アメリカがIMF体制を解体しようとしていることが前提になる。つまり中央銀行はもういらないというこれまた顎が外れそうになる政策がなければ、到底見えてこない政策だ。では何故このような取り組みをトランプ政権が考えるのかといえば、中央銀行の利上げが、現在の世界的インフレに繋がっていると考えるからだろう。つまりトランプ政権はこれを止めなければアメリカ産業の復興は有り得ないとまで考えているからだろう。
ところで世界の景気を停滞させている原因にはもう一つの要因がある。それがバーゼル条約によるBIS規制だ。これは資本の一部を海外取引の安全性を高めるため担保しようとするもので、現在これは中央銀行の取引以外にも一般の銀行や企業にも適用されている。ところが、これにより社会には内部留保というお金の滞留が起こってしまっている。これについていえば、日本企業全体でも500兆円を超えるお金がなんら社会に貢献できずに惰眠をむさぼる結果になっているのだ。
そして、政府もやはりこのような外貨準備というものを抱えている。現在財務省のHPによるとその金額は185兆円になるというのだ。では将来為替相場のリスクがなくなった世界でこのお金はどうなるかといえば、不必要なお金と言う事に成る。ではそれで直接アメリカに投資できるかといえば、それでは今後日本企業が救えない事態になった場合はとてつもない非難を浴びることになる。そのようなことから首相は先の会談で政府のお金をアメリカ投資に直接向けるという発言ではなく、日本企業のお金という言い方をしていた。このことから言えるのは、日本政府はBIS規制を受けながらも資金の帳尻を企業の懐に委ねるということだ。つまり今の規制を維持したまま、日本企業の内部留保の一部をアメリカの投資に向けることだ。そして、むしろそこから利益が生まれれば企業にとっては、まさにウィンウィンの関係が生まれる。
ではこのような備蓄米にも相当する日本企業の内部留保をアメリカへの投資に向けることは可能だろうか。その答えはアメリカと日本企業の間に政府が入ることで、その可能が見えてくる。というのも自己資本には、今のところ海外の株式投資などを組み込むことは出来ない。ところが政府系の債券であれば自己資本に組み見込むことが許される。現在農林中金などもこれを利用し劣後債などの信用の低い債券で運用している。
それでは、アメリカがこのような債券を発行し、日銀が外貨準備金をこの購入資金に当てた場合、これを日本企業の自己資本に組み込ませることが出来れば、結果的に日本企業がアメリカ企業に投資したというストーリーになるかもしれない。ありえない話と笑われるかもしれないが、将来2国間で為替のリスクが無くなると考えればありえない話ではないように思える。