今昔問答
2025年 6月25日 太平洋と大東亜

戦後は第2次世界大戦における日本の戦いは太平洋戦争という呼称で教わる。ところが、戦前、戦中の日本はこの戦いを大東亜戦争と呼んでいた。気を付けなければならないのは現在の自衛隊で大東亜戦争という呼称を使えば非難の対象にされてしまうことだ。というのもこの呼び方は先の大戦における日本の戦争目的を世間に知らしめることになるからだ。さてこの耳慣れない大東亜とは満州国建国の理念である五族共和という意味が含まれている。つまり満州人日本人蒙人漢人朝鮮人が協力してアジアに経済圏を築くことが強力な西洋経済に対抗できる唯一の方法と考えられていたからだ。
これは大変結構な考え方のように思えるが、この戦いに敗戦した日本は、戦後このことを日本の帝国主義を隠蔽するための詭弁だということにされてしまった。その代わりハワイの真珠湾攻撃をイメージさせる太平洋戦争という呼称が用いられたのだ。
それでは敗戦後日本の武装解除により、アジアに平和は訪れただろうか、これもあまり知られないことだが戦後すぐに起こった朝鮮戦争では同族同士の争いで実に500万人の命が犠牲になった。それに比べるのもなんだが、参考までに世界の主要国9か国を敵に廻し原爆まで落とされた日本の損害は官民で310万になる、要するにそれほど悲惨な戦争が戦後すぐ日本の隣国で起こっていた。
話は変わるが先日放送された朝ドラで、やなせたかし氏を描いた柳井崇は、戦争中、福建省に出征し赴任地では宣撫班という聞きなれない部隊に配属される。この宣撫班(せんぶはん)とは要するに、占領地の民意をいかに友好的なものにするかという軍の広報活動なのだ。そしてここに登場するリンという子供のスパイは、親を日本軍に殺された恨みで崇の戦友を殺してしまった。ところでこのリンという少年が使ったモーゼル拳銃をみても、NHKの凄まじい時代考証への拘りを感じてしまう。つまりこのドラマに登場する紙芝居や台詞回しなどにも確りしとた時代考証があるに違いない。
そのような見方で視るとこのドラマ自体が歴史的資料として参考に出来るのではないかと思ってしまう。そうだとすると、ここで不思議に思うのは南京虐殺という日本軍が被せられた汚名についてである。もし先ほどのドラマが史実や資料に基づき造られたとすれば、南京大虐殺は辻褄が合わなくなる。というのもこのドラマのほとんどは南京戦後の戦地を描いており、それほどの非道があっても、日本軍が紙芝居で民意を取り繕うなどありえないだろう。私の調べた限りだが、これを裏付けるように当時の将兵は南京入城の際、進駐軍宜しく飴玉をポケットに忍ばせて南京に入城したと聞いている。
もし何十万人もの虐殺を実際に日本軍が行っていたとすれば、日本軍はリン少年のように住民からあちこちで復讐にあっていてもおかしくない。ましてや戦後に行われた残留孤児の帰国などはありえなかっただろう。
話を戻すと本来の満州国建国の理念は五族協和と王道楽土であった。ともに東アジアの各国が手を取りあって経済を発展させその利益を享受することにあり、どこかの国が全ての利益を独占しようと言うことではなかったはずだ。もし利益の独占により自国だけが潤うことを目指せば、このような王道楽土の考えは当時から望むべくもなかっただろう。そしてたとい軍の中枢ではどのような思いが画策されていたにせよ、そこに参加した将兵の思いは、アジアに平和で開かれた世界を実現しようという思いだったに違いない。そのように尊い魂のよりどころはどこにあるのか九段の靖国以外ない。