今昔問答
2025年 6月27日 トランプマジック
マジックというものはどれほど単純な仕掛けでも種を明かされるまでは、未知の力を操る超能力者に見えてしまう。昔一世を風靡したMr.マリックさんなど番組のゲストが目の前で起こっているマジックを信じ込み、番組内でもこれを見て体調不良を訴える方が続出していた。そんなマジックも最近はネットでどんどん種明かしが進んで、あの当時本気で超能力だと信じ込んでいた自分が恥ずかしくなる。
ところで、トランプ政権誕生後の世界情勢は停戦不可能と思われていた戦争が、次々停戦の兆しが舞い込み平和の希望を感じている。というのも今回のイスラエル戦争では、突然のイスラエルによるイランへの空爆により、このような平和の希望は失われてしまったと思っていたところへ、今度はアメリカ軍がイランの核施設空爆というニュースが飛び込み、全面戦争待ったなしの状況と思っていた。ところがその翌日世界を駆け巡った報道は、なんと両国が停戦に合意したというまるで奇跡のようなニュースだった。
これに関連して、昨日トランプ大統領がNATOのルッテ事務総長との会談において、あろうことか先日行われたイランの核施設攻撃は、長崎広島への原爆投下と同じ意味を持つという、まるで長崎広島の原爆投下を正当化するかのようなコメントが飛び出してきた。これでは日本国民の民意を逆なでするような発言がわざわざ世界中が注目している場で行われたことになり、日本の民意は騒然となった。とはいえこのパフォーマンスは会議への出席を拒否した日本政府への不満の現れだと思うしかない。しかしながらこの言葉を冷静に事実と照らし合わせてみると違った見方が現れて来る。つまりこの爆撃はイランの核施設を破壊することだったという事実だ。長崎広島の原爆投下は核兵器による人類の虐殺であったとすれば、今回のアメリカ軍による空爆はまさにその核兵器に対する破壊だったのだ。このように考えれば、今回の発言は人類が乗り越えなければならない核依存にたいして一石を投じることになったと言えないだろうか。
さらに言えば、今回会談を持たれたNATOの首脳会談でアメリカはNATO加盟国へむけGDP5%の負担増を要求していた。会談の様子を視ればNATO各国首脳はこれでアメリカがNATOを離脱することはなくなったと理解されたのかもしれない、会談後のEU各国首脳の満面の笑みが印象的だった。ところでこの5%という数字は一体どこから出てきた数字だろうか、私なりに想像してみると、この数字にはちゃんとした根拠があるように思える。さっそくこのことを計算しやすいようにざっくりした数字に直してみてみると、NATOの年間予算は約1憶ドルであり、これまでアメリカはこの7割を負担をしてきたと言われている。一方NATO加盟国のGDP5%負担増がどれくらいの額になるのか、これもざっくりとした数字に直すとEU全体でGDPの総額が約2兆ドルあるとすれば。その5%とは1000億ドルになりちょうど、今現在のNATO軍全体の予算と釣り合う。つまりEU各国がGDPの5%を負担出来れば、NATOはすべてEU各国の負担で済むことになる。ここでアメリカの負担率が決まっていないと言う事は、アメリカの負担はそのおまけのようなものと考えているのかもしれない。このように見ると一見トランプ大統領はNATOの参加国に軍事費の負担増を要求し、あたかも軍拡の流れに導こうとしているように受け取ってしまうが、蓋を開けてみれば自分たちの安全は自分たちの負担で行ってくださいと言っているのと変わらない。
この様に世間ではどんな発言が飛び出してくるのか予測がつかないとされるトランプ氏の発言だが、私にとっては、以前からその本質は全くブレていないように感じている。むしろ、謎の反転を繰り返すどこかの首相とは大きな違いを感じてしまうのだ。