G-BN130W2PGN

お問い合わせ先

mail@makotoazuma.com

 

今昔問答

2025年4月18日ようこそブログ

2025年 4月18日 散り際

大河ドラマのような連続もののドラマでは、俳優の出番が終わるととても寂しい思いになる。先日放送されたべらぼうと言うドラマでは五代目瀬川の別れの場面に、満開の桜がすべて散るほどの寂しさを覚えた。ところがこのドラマで矢継ぎ早に起こる次の別れは、ドラマの意外な展開に自分でも驚きを隠せない。場面は将軍の長男家基が毒殺されたことにより、それまで将軍に徴用されてきた田沼意次の立場がこれを切っ掛けに危うくなってしまう。と言うのも毒殺に使われた証拠の手袋は、献上品として田沼意次が用意したものだったからだ。これにより自分が嵌められたことを察した田沼は手袋の回収を急ぐが、これまで何かと対立してきた松平武元に先を越されてしまう。まもなく絶体絶命に至った田沼は松平武元から茶席の招待を受ける。ところが、ドラマはここで意外な展開になる。これまで田沼の敵と思っていた松平武元が田沼に対し共に犯人逮捕に協力せよと申し出たのだ。

この話が更に意外だったのは、これまで敵と思ってきた松平武元が、田沼の身の潔白を将軍に対し直々に進言することを約束したことだ。黙っていれば田沼の失墜は確実の場面でありながら、ここにドラマでは石坂浩二演じる松平武元の強烈な台詞が登場する。うる覚えだが、「このまま黙っていれば、自ずと疑いは田沼に向かう事に成る。とはいえそれでは真犯人をみすみす見逃してしまうことになる」と言うのだ。しかも田沼がこれまでの政で執拗に金に拘る様は受け入れがたいが、その真の目的は幕府の再興を願ってのことと認識されている。つまりここで二人は価値観の共有を確認できたということだろう。

さらに茶室の場面では金というものに対する松平武元の見識が語られる。「金の価値というものは所詮当てにならないもので、実際取引される品物や労働に目を向けなければ、本当に大切なものを見失ってしまうという。」まさに今、この言葉がどこぞの国会で語られていれば、と思うほどの見識の高さだ。きっと作者はそんな思いもこのドラマに込めていたのではないかと勝手に想像してしまう。

さて、最初眉毛ぼうぼうで頑固そうな年寄りの役柄を演じた石坂浩二氏だったが、これまでの大河ファンからすれば、普段んとのあまりの変わりようにメイクアップ技術の凄まじさを感じていた。しかもこの回の放送までは、言葉を押し殺す演技に終始してきた名優にとって、この回は老人という外面的な表現から、武士の本懐という崇高な内なる世界を展開させる最大の山場だった。まさにこれぞ散り際の美しさというものだろう。このようなドラマを視るとやはり理想に生きる人達はカッコいいと思う。

 

ようこそブログ

Posted by makotoazuma