今昔問答
2025年 7月24日 2度目の敗戦?
昨日はいきなり日米関税交渉の妥結という報道が世界を駆け巡った。交渉といえば互いの立場の妥協点を探ることだと思っていたが、この度の交渉について日本は何を譲って関税交渉成立となったのか、政府の詳しいコメントはない。加えて交渉開始から随分と時間がかかっていたが、何故このタイミングで関税交渉は妥結したのか理解できないでいる。
取り敢えずアメリカ側のコメントでは、アメリカ製自動車に対する市場開放が約束されたために15%の関税で妥結したそうだ。とはいえ、これまで日本の市場はアメリカ製品に対してどんな関税障壁があったのかといえば、これまた疑問符が付いてしまう。さらには同じく総合関税のやり玉に上がった農産物に対して市場開放がなされたというが、そもそも日本の農業は肥料、農薬、種苗法なども含めて国の農業として自立した状況にあるとは言い難い。ここにきて日本文化の支えであるコメに対してまでも輸入を強要されたとあれば、日本人としてのプライドまで蔑ろにされた交渉のように思えてならないのである。
驚いたことにこれとは別に、武器の購入やアメリカへの直接投資の為に80兆円の民間投資を約束したというのだが、どのような理屈かそのうち利益の90%をアメリカが頂くのだという。因みに投資は債券とは違い償還が約束されない資金になる。そのため運用利益だけのことを言えば債券よりも高い利回りが期待できなければ正常な運用とは言えない。しかも一般的なアメリカ10年債は今も利回り4.3%以上あり配当性向で比べれば、下手な株式に手を出すより安全である。因みに配当性向3%の株式に投資すると毎年3%の配当が見込めるのだが、80兆円の投資をすると、配当は2兆4千億円手にもなる。ところが今回の交渉では、その内90%がアメリカのものになるのだというのだ。これではまるで、敗戦国の賠償金にも等しい不条理なペナルティーが日本に科せられることになる。ここで一方的と表現したのは、これによる日本の対応が相互的でなければ、貿易黒字は罪だという市場原理に対するアンチテーゼに等しい。
とはいえ最も腑に落ちないことは、アメリカ側がこのように繰り返し広げられる大風呂敷をまるで疑わないことだ。今回も最初の日米首脳会談で飛び出していたこのような日本の発言を、今回も何ら疑うことなく革新的な提案だと言って、交渉成立の一因としていることだ。アメリカがこのような日本側の提案に対して何ら精査せずに受け入れているとも思えないのだが、日本の政府はよほどアメリカに信用が厚いらしい。
さて、この交渉の様子を例えれば、まるでジャイアンとのび太君のような関係が浮かんでくる。要するにこの関係を決定づけているのが日米安保という主従関係に尽きる。つまりこの関係を改めない限りは、ジャイアン、のび太の関係が改まることはない。結局どれほど日本が戦力を積み上げたとしても、現憲法下では、日本は常にアメリカ軍に守って頂いているという構図は変らないのだ。日本は、これから日本を担う世代の為にも、このように不当な交渉に甘んじてはいけない。要するに日本は日本人が護るという常識に立ち返るべきだ。