日々これ切実
2025年 8月23日 人は何故描く
昨日はアールブリュットと言われる45人の作家による展覧会を見てきた。いわゆる障害を持った人達による展覧会なのだが、興味深いのは作家は何を目指して創作に励んだのか、やはり黙して語らない。このことは以前紹介した山下清展でも感じ思いがしていた。つまり彼らの創作に対するモチベーションは、ほぼその場限りの情熱のようであり。作品とはまるで等身大であるように感じる。
というのも彼らの創作は、想像もつかないほどの細部から始まり、後から気が付けばそれが大きな構造の一部であったことが分かる。このような制作の過程を見ると、どこかに最初から精緻な図面があったのではと思いたくなるが、そうでは無い。不思議なことに彼らの創作過程には間違いやためらいがないのだ。つまり、彼らは頭に浮かぶ青写真を辿っているのではなく、一筆一筆の作画そのものが平面を超えた創作物になっている。これはあたかも大海の一滴を具現化する行為のようにも感じてしまう。これは私の勝手なこじつけかも知れないが、草間彌生氏はかつて自分の個性が、数多の細胞に埋没してしまうというトラウマに怯えていたという。そのためだろうか氏はこの繰り返されるイメージを克服するかのように、今も繰り返される水玉の増殖と葛藤しているそうだ。