日々これ切実
2025年 12月11日 国民の覚醒

折角政府が用意した、お米券の支援が躓いている。困ったことにこの窓口となる地方がこの配布に難色を示しているという。たしかに地方交付金により米券配布を地方に任せるのはいいが、配布する対象が政府から明確に示されていなければ地方が混乱することは目に見えている。とはいえ地方自治体が取り組むプレミアム商品券等の取組は自治体の規模にもよるがとても魅力が有り、これに準じた取組であれば地方の活性化には役立つはずだ。
しかしながらこれを成功させている自治体も成功までの道筋は簡単ではなかったはずだ。要するに政府がどの程度までこのような地方の取組を理解していたかが、今回の摩擦を生んだ原因にも感じる。
そもそもこのような対処療法的コメ高騰対策は果たしてどれほどの効果が期待できるのだろうか、結局この費用対効果を考えれば私も、この政策にはネガティブなイメージしか持てないのである。というのも現在国民が最も期待している対策は米の価格を単純に押し下げてくれることだと思う。例えば今年の全国の米の収量は約720万トンで、今年JAの購入した米の価格は玄米1㎏で平均で616円であり、これを精米しても原価は680円ほどだ。つまり流通の経費無しの米の原価は5㎏で3400円ほどになる。ところがコメの高騰が続く令和6年の値段は60Kgの米に対してその7割ほどで、5㎏の精米価格に直すと2,400円でしかない、しかも令和6年コメの収量は679万トンであり今年の収穫量を比べても40万トンも少ないのである。つまりコメの市場においては米はダブついているにも拘らず値段が下がらないということになり、これでは正常な市場のコントロールが崩れていると考えるしかない。
私はこのような歪みこそコメ価格高騰の原因と考えている。ではなぜ収量が増えているにも拘らずコメの価格が高騰するのかという問題になる。これについてはJAの概算金払いという農家から米を買い取る仕組みにあるだろう。というのも農協はコメ農家が農業経営を安定化させるために収量が決定する前から買い取りの値段を決定しているのである。このため概算価格の参考となる価格が高騰すれば、次年度の米も収量に関わらず高騰し続けてしまうのである。
だとすればコメの高騰を防ぐ方法はこの買取価格に注目すべきではないだろうか。つまり、農家からの買取価格を決定するにあたって政府が何らかの介入が出来れば、米の買取価格を安定化させることは可能なように思える。ところで、この問題を考えるにあたって留意しなければならないことは、米という農産物は日本という国家の歴史と深く関わり、たんなる市場経済で取引されて良い農産物とは一線を画すという認識である。というのもコメの生産農家が、これまで日本の歴史において様々な地方文化を支え、これを継承してきたからだ。ようするに地方創生と云っても単純に経済力を地方に分散させるだけでは成し得ないのである。
このような観点からも今回のお米券配布の様な、その場限りの対処療法では地方からの反発も避けられない。そればかりか、国民に対しコメ高騰の対応策としても納得の出来る回答にはならないだろう。とはいえ、現在の農政がこのような状況に追い込まれているのは、前政権から続く農政への失態が露見したに過ぎない。今回このようなその場しのぎの対応にならざるを得なかったのは、現政権のスタートがそもそも民意を充分に反映した状態にあったとは言えず、不本意な状況のまま政権を引継がざるを得なかったことにもあるだろう。だとすればここで新たに民意を問いなおし、これにより国民と一丸となってこの難局を乗り越えるべきと考える。現在の国民はマスコミの仕掛ける様々な釣りにも動じない確かな現状認識が出来ている、国民はすでに目覚めているのだ。