盾つく虫も好き好き
2025年 11月5日 やっぱりこの人

危険だ!防衛大臣として勇ましく振舞うのはいいが、大臣としての発言が外交問題に直結することをわきまえて欲しい。
とはいえこのような発言は、昨年の総裁選ですでに披露していた候補者がいた。しかも実際に政権についてみれば、被災した国民よりも海外にお金を配ることを優先するという不思議な政策を披露していた方だ。これでプライマリーバランスだなんだと言われるので、いよいよ私は目まいがしていたところだった。
ところで私が原潜保有について何故ここまで躍起になるかといえば、この発言は政府の見解として日本の周辺国に大変危険なメッセージを送ったことになるからだ。というのも、原子力推進の潜水艦の特徴は航続距離が無限大で高速航行が可能なことにある。要するに世界の海を股にかけ神出鬼没の脅威を相手国に与え続けるのが原潜の役割だ。つまり、これに核兵器を搭載しておけばいかなる国に対しても、核攻撃の脅威を与えることができるというわけだ。最近沈黙の艦隊という映画があったが、原潜一隻で一国の軍隊に匹敵する脅威を与えることができるというのがこの映画の伏線になる。つまりこのような潜水艦の配備を望むと言う事は、世界中に日本の軍事的脅威をアピールすることに等しい。
とはいえ、今日本に核兵器などないではないかと思われる方も居られると思うが、このような発言をすれば、これから政府がそのような準備を目論んでいると受け取られても仕方がないのである。しかもこれほど核戦争の緊張が高まっているこのタイミングでこの発言は、戦争継続を望む人たちにとって、ある意味絶妙のタイミングなのではないだろうか。
因みに、航続距離が長くスピードが速ければ潜水艦同士の戦闘でも無双ではないかと考える人も多いだろう。ところがそのコストを考えるとそうとばかり言い切れない。因みに原潜一隻を配備するための費用はどれほど掛かるのかといえば、一隻当たり1兆円の費用を見込まなければならないそうだ。しかもこれの運用に当たっては乗員の訓練から造船の技術まですべて海外に頼らなければならず、さらに原潜といえば軍の装備品の中でも第一級の機密事項になるので技術移転などのハードルはさらに高くなるはずだ。これに対し世界一の性能を誇る最新のそうりゅう型潜水艦の値段は約700億円にすぎない。しかも通常型潜水艦の運用は日本の周辺海域に潜み迎撃に特化した任務がほとんどで、この配備によって周辺国に与える脅威は極めて限定的だ。簡単に言えば1隻の原潜対100隻の通常型潜水艦を比べた場合どちらが優勢かということになる。また、この判定を別な角度からみると、潜水艦の攻撃力は簡単にいって積載できる魚雷の数できまる。ということは補給がいつでも無限に出来る環境であれば、その能力は無限大になる。何を言いたいかといえば、こんなことを言う前に南シナ海まで伸びる長い日本のシーレーンはどうやって守るつもりなのか、或いは現在交渉を進めようとしている北朝鮮との拉致問題解決や北方領土の問題解決に向け、すでにロシアと膝を交えなければならない時期に来ているのではないだろうか。
要するに、このような装備品の議論をする前に文民として、外交問題を考慮する行動や有事に備える法整備を進めることが最も期待される責務のはずだ。だとすれば、そのような法整備を簡便に進めるためにも、むしろ周辺国との不用意な緊張は極力控えるべきではないのか。