盾つく虫も好き好き
2025年 11月25日 ミリオタ防衛論

今から30年前、架空戦記なる小説や、漫画が流行っていた時期がある、なかでも沈黙の艦隊という漫画はアメリカで建造された原潜を暴走した自衛隊員がクーデターで乗っ取る。ついでに核ミサイルも猫糞して独立国となる設定なのだ。偶然かも知れないが、これに合わせるように今自衛隊の原潜保有計画が持ち上がっているのだ。とはいえこの映画では、奪い取った原潜で東京湾に入り核ミサイルにより日本政府を脅すというのだから恐ろしいことこの上ない。こんなとんでもない設定の漫画だが、作品は緻密な取材でリアルに描かれ実際に起こり得るのではと信じてしまうほどだ。とはいえこれを現実の世界に持ち込むと様々な矛盾が起きてしまう。
というのも漫画にもある通りこの潜水艦は自衛隊がアメリカに発注したという設定なのだが、漫画の日本政府は、自衛隊にどのような戦略の下でこの潜水艦を用いようとしたのか。簡単な話、この映画にもあるように、原潜は、核を積みどこかの国を脅すには最適の武器になる。ところが、自己防衛という建前で成り立つ自衛隊にはその出番は限りなく火いと言わざるを得ない。つまり自己防衛というパッシブな視点からすると原潜は通常型潜水艦に見劣りしてしまう。というのも原潜はその構造上どうしても原子炉を冷やす必要があり、艦の推進を止めても冷却ポンプの音まで消すことは理論上不可能と言われているからだ。つまり、どれほどスピードや航続距離が優れていても深海で待ち伏せするという運用には適さないことになる。しかもそのコストは建造コストだけで通常型のものり10倍のコストになる。簡単に言えばそのコストを掛けるくらいなら10倍の潜水艦を備えることが出来るのだ。
それに引き換え日本近海における運用を考えれば、これに最も求められる潜水艦の性能は隠密性の高さに限るだろう。そしてこれに対応する潜水艦の数を考えれば相手国が運用できる海軍力に見合う数を揃えなければならないのではないだろうか。つまり仮に相手国はこれにより大艦隊を一瞬にして失う可能性がある。こんなことが実際に起これば相手国は政権維持能力を失い、早速そのような政権は国を追われてしまうに違いない。
それよりも日本が世界に先駆け開発に成功したレールガンやレーザー兵器、或いはマイクロ波を使った兵器などは火薬頼みの戦闘を一新させる可能性を孕んでいる。何を言いたいかといえば無用の長物に大切な予算を振り向けるよりは、このような最先端技術に予算を振り向けることで日本企業は新たな市場を手に入れることができるのではないだろうか。
しかもこれにより起こることは核兵器の陳腐化だ。核兵器といえば莫大な破壊力を生む代わり、これをコントロールすることはできない。しかもこれが使われれば環境への被害は想像を絶することになる。場合によっては核の冬による寒冷化で生命が皆死に絶えることもあり得るのだ。
話を整理すると原潜の保有や核兵器の保有は、自衛という目的すら達成できない可能性が残る。何故なら核兵器の保有はこの脅威により相手国は恐らく攻撃してこないだろうという想定の根拠しか持たないからだ。私はこのだろうの効果に頼るのはむしろ危険と考えている。というのは相手国がこの被害を想定内としている場合は、核兵器を数多く保有している方が最終的な戦争の勝者になり得るからだ。だからと言ってその勝者に、その後の快適な生活環境がもたらされるかどうかを考えてみれば、「そんなことは止めとけ」と言ってあげるのが親切のように感じる。