盾つく虫も好き好き
2025年 12月17日 小説「EUとIMFの崩壊」vol3

目論見の根拠
さて、これほど重要なIMFの信用を危うくして迄、他人の資産を流用しようとするのはどのような魂胆なのかと考えれば、結局それ以上ののっぴきならない事情がそれぞれの国にはあるからだろう。つまりウクライナの敗戦というのは彼らにとって絶対に受け入れられないことなのに違いない。
勿論彼らというのはウクライナの戦争継続を願う人達なのだが、知らないうちにこれに巻き込まれている国には気の毒としか言いようがない。なんでもマスコミから伝えられる彼らの思いは、ウクライナがこの戦争に負ければ次にロシアから狙われるのは自分たちなのだそうだ。ではその証拠はといえばこれを証明することは出来るのだろうか。
それよりも心配なことは、ウクライナにおける現在の戦況だ。これについては2022年の状況と現在と比べても素人目にはどこが変化したのか分からないのである。とはいえ最近は戦闘地域が少しづつ拡散しているように思える。そしてとくに顕著に感じるのが首都キーウ周辺の戦闘だ。しかも先日の米露の停戦交渉を見ればロシア側の態度が明らかに硬化していることが分かる。というのもこれまでの停戦交渉ではロシア側は停戦についての代案を即座に提出し話し合いに歩み寄りが感じられる場面が多かった。ところが先日の交渉では言葉よりも態度で示せと言いたげなのである。つまりここまで態度を硬化させていると言う事は、この戦争は終結の目途が立っているとでも言いたげに感じるのだ。
終戦となる根拠
というのもこれについて戦場の状況が如実に物語っているようだ。要するに戦争の行方を左右する要所が次々陥落している状況であり、西側の支援を受けるウクライナがこの状況に至っている原因を考えれば、単純に兵員不足によるものと思える。だとすれば今後ウクライナ軍が体制を整え新たな攻勢に及ぶ可能性は限りなく低い。或いはもう一つの可能性としてNATOが地上軍をウクライナに直接派遣することなのだが、この可能性について先日の米露会談でロシアは核兵器の使用をちらつかせるような発言をしている。
つまり状況を整理するとロシアの地上軍はじわじわとその支配地域を拡大している。しかもその勢力はドンバス地域以外の首都周辺にも及んでいるのだ。そしてキーウが占領されてしまえば、ウクライナの敗戦は決定してしまう。
戦後処理
さて、こうなった場合のNATOおよびEUの立場は大変危ういものになる。というのもウクライナがここでロシアに武力で完敗したとなれば、恐らく無条件降伏を迫られる可能性が出て来るからだ。こうなった場合の戦争賠償はどのような事に成るのか、もちろんロシア国内で被った被害についてもロシアは賠償責任を追及してくるに違いない。さらに言えばEUによるロシアの資産凍結被害についての賠償だ。具体的に言えばユーロクリアにあるベルギーの33兆円にも達するロシア資産は、すでに金利だけでも相当な額にのぼり、これにより決済できなかった事案の被害はどれほどになるだろうか。これをベルギーの中央銀行にのみこの負担を背負わせるというのはあまりにも理不尽だろう。だとすれば今後EU全体にたいし、このようなウクライナ戦争の付けをロシアから請求される可能性が出て来るかもしれない。もしこのような事態になればEUの足並みが崩れてしまう可能性が一気に高まる。また今回の資産凍結に当たりIMFは銀行としての信用を問われかねないのである。
これらのことは、経済制裁や様々な軍事支援をウクライナに提供してきた日本にも及ぶ可能性がある。だとすれば日本に出来ることは、一刻も早くこの戦争を話し合いで終わらせる仲介をすることではないだろうか。(おわり)