今日のできごと
2021年 7月12日 おかめ団子
また、落語の話です。何が楽しいかというと江戸時代の庶民が感じていた喜びや悲しみがリアルに感じられるところです。江戸時代といえば封建的で身分制度に縛られたさぞや窮屈な暮らしと思われます。
ところがその時代から伝わる芸能に触れると、とても豊かな時代であったことがわかります。このおかめ団子という話も時代の不条理を伝えてくれる話なのですが、庶民の心根にはとても暖かいものがあります。
話はおかめ団子という、とても繁盛した団子屋の器量よしの娘さんが婚礼のため店を早仕舞いしようと店中大忙しのところから始まります。そこへ身なりの粗末な大根売りが団子を一皿求めに来ます。
ところが、奉公人は早く店を閉めたいがためにこの大根売りを相手にせず返そうとします。その様子を見ていた主人は、奉公人をいさめ、大根売りを店に上げ、ここの団子が好きで買って帰るのを楽しみにしているとのこと主人は詫びを入れこの若い大根売りにも団子とお茶を進めます。
この男が土産の団子をもって家につくと、母親が寒さに震えながら起きて待っていました。理由を聞くとせんべい布団が痛くて寝ていられないとこぼします。新しい布団を買うには40貫という大金が必要です。男は先ほどの団子屋でその日の売り上げが80貫あったことを聞いていました。そのお金があれば親を暖かい布団に寝かせてあげることが出来る。いずれ自首するにしても親の生きている間は見逃してほしい。男は母親が寝入るのを待って、団子屋に向かいます。
店の裏手まで来ると木戸の鍵が外れていて容易に中に忍び込むことが出来ました。そこから中に入ると庭に大きな松があり、先ほど婚礼の支度をしていた娘がその木で首をくくろうとしているところでした。
我を忘れて男は娘を助けましたが、ほどなく処団子屋の主に見つかります。話を聞くと娘は自分の意にそぐわない縁談に世を儚んだというのですが、主は、この男を許し後ほどこの男と娘は結婚してこの店をさらに盛り上げていくというお話です。自分の店に泥棒に入った男と自分の一人娘を添わせよという。許しの極致のような話です。落語には底抜けに暖かい話がこれでもかってくらいあります。江戸時代ってこんなことが起こっても不思議ではない風潮だったのかもしれません。でなければ共感は起こりません。 落語研究会 林家正蔵 もう名人ですね。私にとってはこぶちゃんなんですが。