今日は好日
2022年 6月23日 蓮池の水面に
蓮池と聞いてすぐに思い浮かぶのが、芥川龍之介の蜘蛛の糸だ、初めてこの話を知ったのは小学校2年の時の授業で影絵を使ったテレビ放送を見たのがきっかけだ。どれほどのインパクトかと言えばこの時の記憶がいまだに抜けない、あの地獄に渦巻く叫び声や、蜘蛛の糸が切れるのではないかと言う恐ろしさは、トラウマとなって今でも私の心に深く刻まれている。ところで何故私が急に蓮池の話をしたのかと言えば、今朝ほどまた妙な俳句が頭に浮かんできたからだ。
「蓮池の 水面に己が 顔映し」とうぜんあの恐ろしい蜘蛛の糸の話も頭に浮かんでいて、水面に映る自分の影と地獄の底から池の外を覗く、カンダタを重ね合わせているのだ。このようなことを書くと私が自分の死期を感じて地獄の恐怖に慄いているように受け取られるかもしれない。私の記憶から抜けないというのはそのようなこともあるかもしれないが、私が今日お伝えしたかったのは文学という表現の世界のことだ。ひとが生きるというのはこれほど不条理な世界で感情をもみくちゃにされながらも、そのことを受け止める行為だと思う。
蜘蛛の糸にしろそれは道徳的な善悪について述べているのではないと思う、人生において悲しみは拭い去ることは出来ないが、悲しみもまた人生を彩る輝きではないだろうか。(天国地獄について)
そんなことを考えながらポストを覗くと、恩師の回顧展の案内が届いていた.
「鈴木秀明絵画展」
会期6月30日から7月5日 会場テーオーデパート4F