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独立自尊 奥の細道

2024年7月18日gallery,ようこそ,絵本墨絵 俳句

松尾芭蕉の肝試し

野を横に馬牽向ひきむけよほとゝぎす

という句についてです。この句を予備知識なしに読むことは可能なのでしょうか。私にとってはミステリー小説を読むようで、俳句だけで何かを想像することは困難なように感じます。

今回は俳句から直接イメージを捉えるのではなく状況証拠を積み上げながら俳句を楽しむという新しい試みをしてみたいと思います。

まずは状況証拠1の図です。

この句の背景は栃木県那須にある湯本温泉の名所、殺生石を観光した時の句と言われています。

そして名所にある殺生石が生まれた背景を想像すると、この山の突然の噴火によって山を覆っていた木立が吹っ飛び、そこから流れた溶岩ボルケーノから奇岩の立ち並ぶ不思議な道が出来ました。また周りの木立が吹き飛ばされた後は、野原となってボルケーノの道を囲んでいます。

そして山の頂き近くにある一際大きな岩を殺生石と言って恐れたのではないかというものです。殺生石の伝承は退治された九尾の狐の呪いがこの殺生石となり近くの生き物の命を奪っているというものです。確かに目に見えない力によって石の周りが蜂や蝶のおびただしい死骸で覆われているのを見ると呪いという言葉がぴったりなのかもしれません。

実はこのような温泉場の近くでは目に見えない毒ガスによる事故が今でも起こっています。特に青森県の酸ケ湯温泉近くでは2014年に3人、1997年にも自衛隊員の方3人が訓練中に亡くなっています。

ところで「炭鉱のカナリヤ」という言葉をご存じでしょうか。これは、炭鉱ではこのような毒ガスの事故が頻繁に起こるため、危険を炭鉱夫にいち早く知らせるセンサーとしてカナリヤが使われていました。つまりカナリヤが鳴いている内は安全だということです。このカナリヤセンサーの代わりがこの句のホトトギスではないかと考えました。

さていよいよ本題「野を横に馬引き向けよホトトギス」の句ですが今までの禅僧目線でこの句を味わうよりは、この句は観光旅行者目線がぴったりのようです、しかも好奇心を抑えきれず芭蕉一行は危険な殺生石の見物に出かけます。まるで肝試しのようだと思いませんか。

一行は溶岩で出来た奇岩の間を馬を引き連れ登って行ったのですが、実際に殺生石を観てみると、殺生石の周りはおびただしい虫の死骸で覆われていて、いまだに毒ガスの勢いは収まっていないのだと芭蕉は悟ったようです。このことを芭蕉は狐の呪いではなく目には見えない毒ガスというものの仕業であることを理解していたのではないかその為、帰り道に何か異変があれば、すぐさまホトトギスが鳴いている野原の方へ逃げるよう馬子に指示したのではないかという解釈です。