今日は好日Vol.2
2022年 12月3日 久しぶりのオーディオ
オーディオといってもシステムの内容を聞いたらマニアの方はがっかりされると思う。それほどこのシステムはチープな内容におもえるからからだ。 とくにメインのスピーカーはオラトーンの5Cという骨とう品を使っている。先ほどオークションを覗いたらペアで5,000円ほどで取引されているようだ。確か私が購入したときは倍以上の値段だったような気がする、あれからさらに価値が下がったようだ。
そんなでかいサイコロのようなフルレンジスピーカーを4本使っているのだが、そのうちの2本を長岡鉄男式のリレーで遅延した信号を部屋の壁に向かって反射させている。簡単に言えばエコーを部屋の壁を使って再現しているようなものだが電気的に信号をいじったものより、私は生々しい雰囲気を感じている。そしてアンプは手作りキットのTU-870、マニアからすれば子供の遊園地だ。 もともとパソコン用スピーカーのつもりで始めたシステムが、いつの間にかメインシステムに対抗する探究の場になってしまった。
とうとうサブウーハーを両袖に追加して決着することができたのだが、そんなオーディオ熱もこのところご無沙汰することが多かった、それよりアウトプットが楽しくて落ち着いて音楽と向き合うことができなかったのだ。 さて初めに選んだCDはフジコヘミングチャイコフスキーピアノ協奏曲1番の入るアルバムだ。実際のコンサートで聞く彼女の音楽は、それまで聞いたどの演奏家よりも特別だった。深くて包み込まれるような音と煌めくような音色が際立って感じられた。それは彼女が愛用するブリュートナーというピアノの音だったのかどうか分からないが、彼女の演奏を再現するということは、そんな奇跡にどこまで近づくことができるかということなのだ。そんな期待のうちに臨んだ私の玩具のようなシステムは、けなげにもその片鱗を感じさせてくれた。
私は気をよくして次にかけるCDを探した。ここまでくると弦楽器の音色が気になる、取り出したのはバッハの無伴奏チェロ組曲だ。この曲はチェロ以外にも様々な楽器で演奏される名曲だ。その昔タバコ屋の宣伝で使われていたが、とてもかっこいいCMでこの曲を聴くと今でもピースのイメージカラーのブルーと朝靄での演奏シーンが目に浮かぶ、きっとこれまでにも多くの名演があるはずだが、私のお気に入りはムスチスラフ・ロストボービッチの1番と4番だ。録音は1964年とある。それほど昔の演奏がこの時代によみがえって私たちに感動を与えてくれる、デジタル技術は過去の音楽家まで永遠の存在にしてしまったのだろうか。 音楽は歴史にこびり付いた人間の恨みを、拭い去ることのできる大切な存在なのかもしれない。