今日は好日Vol.2
2023年 6月22日 イールドカーブって何?
今朝もTVの経済番組では日銀のYCC(イールドカーブコントロール)についての取り組みをコメントしていた。内容について私は朝食に集中していたので、しっかり聞き取ることが出来なかったが、そのため私の誤解かもしれない。その内容は日銀の政策方針変更を期待しているようだった。結局私には直ちに金利を上げろとコメントしているようにしか届いてこなかったのだ。そのことについて、日本では言論の自由が保障されているのでこの論を止めることは出来ない。
しかしながら、このようなコメントが多くの視聴者に誤解を与えることにならないかと私は老婆心ながら心配している。特にここで問題になるのがイールドカーブという耳慣れない言葉の解釈だ。この言葉は現在の日銀が何を指標にして政策を行っているのかということを示している。ここで注意が必要なのはこのイールドという言葉は一般的に利回りのことを指しているが、誤解のないように利回りが何かといえば、世の中には様々な資産があって簡単に比較することは出来ない、そこで用いられるのが、この資産が1年間でどれだで稼いだのかを示す数字が利回りだ。よく銀行などのコマーシャルで今なら金利3%などと書いておきながら、但し書きに3か月定期預金などと書いてあったりする。これを利回りにすると1.2%にすぎないので、なんだかすっかり騙されたような気持になるのは私だけではないだろう。そのため利回り(金利)などという表現がされている場合には充分な注意が必要になるだろう。
では何故、利回りをコントロールすることがそれほど重要なのかといえば、それは金利と債券価格の関係にある。通常債券の世界では金利の高い債券が発行されれば、金利の低い債券は魅力がなくなってしまう、そこでどうしても魅力のない債券を売ろうとすれば安い値段で手放すしかない、そうすることで債券の売買はやっと成立することができるのだ。
さて話をイールドカーブに戻すと、債券は約束の期日まで保有すると決まった利益が必ず入ってくる。戦争や災害で国が危うくならない限りは、一般的に国債は約束された満期まで保有することで利回りは最大になる。ところが、期日前にその債券をどうしても現金化しなければならない時は注意が必要になる。例えばその国自体の信用が下がってしまった場合などは、売買に相当な困難が伴ってしまうのだ。そうなれば、換金に際し元本割れという不測の事態も考えられるからだ。そこで債券価値に急激な変化が起こらないようにしましょうというのが、日銀のイールドカーブコントロールだ。
このことをもう少し掘り下げると、現在この操作は短期債と長期債で操作が分かれている。短期では金利に着目して1年以内の銀行間取引の金利は政策金利とも言われる、そのため一時マイナス金利ということまで起こってしまった。このように日銀が金利に介入しているのは、今のところ短期金利が中心となっている。
ところが、昨年の暮れに巷で大騒ぎになっていたことは、日銀のイールドカーブによる、振れ幅の上限を0,25%から0.5%ぐらいが適当ではないかという日銀総裁の発言だった。このことは、文字通り利上げの発言ではない、ところが、マスコミはこのことをいっせいに利上げだと騒ぎだした。おかげで巷の住宅ローン金利はとっとと変動してしまったのだが、これに対して異議を唱えた識者はいただろうか。
そしてもう一方の操作である長期視点のイールドカーブコントロールについては金利の操作だけではなく、イールドカーブの平準化のために債券の売買が行われている。このような操作が必要となるのは社会的な変化によって急激な資金需要がうまれ、一時的にでも債券の値崩れが起こりそうな場面である。
このようにイールドカーブコントロールとは債券の価値を安定させましょうという操作であって、金利を上げて経済に何らかの影響を与えましょうということではない、経済に与える効果について取り組むのは、本来政府やるべきお仕事なのだ。
さてこの話題で私が気になるのはマスコミがなぜ利上げを望むのかだが、このことについての合理的な答えを私は見いだせないでいる。
例えば低金利は金融機関の経営に大きな負担となっているという意見がある、とはいえこれについても今更の感があり、そもそも低金利などはもうそろそろ20年にもなるからだ、つまり金融機関はすでに低金利に対抗できる術を身に着けて営業利益を出しているのだ。また最もその影響が大きいと言われている年金生活者にとって、絶対利上げが必要かと問われれば、そんなことより年金を増やしてほしいという答えが、真っ先に返ってくるはずだ。というのも金利で生活が潤うような資産家の方は、むしろ今の高齢者の内どれほどの数おられるのかと思うのである。
しかも、利上げとはお金の流通を止めて経済を停滞させましょうと言っていることに等しい、こんなことを給与水準が高くインフレの続く諸外国と比べてコメントするのは、コメンテーターの背負ってる看板に傷がつかないかと心配になってくるのだ。