今日は好日Vol.2
2022年 12月23日 三本の矢
先日より日銀の政策に変更があったというニュースが届いて株価は急落している。なぜ日銀が今このようなタイミングでこのような政策転換ともとれる発表をしたのだろうか。 そもそも無制限の金融緩和については2012年12月に発足した第2次安倍政権から始まる、この時、日銀が目標にしたのがインフレ率2%が達成されるまでの無制限な金融緩和だ。そして掲載した図表にはこの目標が今年度達成されることが見込まれている。つまり目標達成により無制限の金融緩和は、いつでも終了を発表してよいタイミングにあった。ところでこの資料は日銀が今年の10月31日に公表した経済・物価情勢の展望というだれでも閲覧できる資料による。
ところが世の中で日銀の政策変更が騒がれているということは、これほどお金をかけて作りこまれた資料が世間で活用されていなかった証拠ではないか、という私も今日、初めて目にした資料なのだが、現在の日本が置かれている状況を詳細に分析された非常に示唆に富む資料である。 ところで私が特にこの資料で気になった項目は、名目賃金についての項目だ。
そのことは図表26から28に示されていてこの項目は我々庶民が今のところ景気の良さを実感できていない理由の一つではないかと思える。例えば図表26によると正規労働者の数は増えているが非正規の雇用は減っていることが分かる。このことはコロナ禍などの理由によって、短期間の間に非正規社員の解雇を示しているのではないだろうか、つまりそれだけ個人の収入は不安定になったことを示す。さらに給与の中身については給与のベースとなる基本給より、特別給与と示されるボーナス支給などの不定期収入の割合が労使ともに増えていてる。しかもこの割合は雇用者の側で特に多くみられる。ではこのような特徴が経済に及ぼした影響とはどのようなものなのだろうか、これにおこることは未来に対する投資が出来なくなることだ。企業においても未来志向の設備投資や研究開発に資金を回すより、その場限りの場当たり的な収益に目が向くようになる。
一方家計に目を移すと、このような環境は大型の消費需要に影響を与得ることになる。その一例として図表38の新設住宅着工戸数を見てみると人口減少の影響はあるものの、着工数は過去最低だった09年に迫るほど下降してきていて、さらにこの影響は日本の不動産投資にも影響を与えていることが分かる。 このような状況を資料から考察すると、やはり浮き草のように不安定な庶民生活からは住宅購入のような大きな消費需要は生まれてこないのではないだろうか。 さて日銀はこの10年で不可能と思われたインフレ率2%を令和22年度で達成することが出来た。とはいえアベノミックス3本の矢で求められた景気循環は、はたして達成できたといえるのだろうか。このことについて残りの2本の矢の達成状況を見ると、戦略的な財政出動や政府主導による投資の促進について否定的にならざるを得ない。異次元の金融緩和は非常時の対応だ、ところがこの非常時を終えるためには政府の政策とぶれることがあってはならないのだ。つまり現時点で政府が増税をアナウンスしてしまったということは、金融緩和の終わりを市場に告げることと同じことではなかったのだろうか。