今日は好日Vol.2
2023年 8月9日 日本の未来と民族音楽
昨日はカザフスタン共和国のサズゲンサジーというバンドから観賞することが出来た。写真が下手で恐縮だがぜひ公式ホームページから彼らの衣装のすばらしさを確認してほしい。さすが国立の博物館傘下のバンドだけあって豪華なこと極まりない。例年参加者の多くはこのような衣装を身に着けて演奏を披露してくれる。今年は世界情勢の影響か彼ら以外にこのような豪華な民族衣装を目にすることは無かった。しかもその演奏においては、どれほどの難曲であっても、さらりと笑顔で弾きこなしてしまう、きっと彼らはいずれの方もカザフスタンを代表するその道の権威なのだろう。
さて、日が落ちてだいぶ涼しい風が吹いてきた、いよいよ秋の気配が近づいているのかもしれない。そんなステージに登場したのがイランのナイエメールだ、ところで最初に紹介した時は3人の出演で、それが昨日、芸術祭公式ホームページにある通り、これでやっと4人目のアーティストがそろったのだ。私のピンボケ写真では5人映っているが、左端の曲に合わせてダンスを踊ってくれている女性の名前は紹介されていない。とはいえ、僅かな手の動きだけでも踊りの魅力が伝わってくるということは、きっと名のある方に違いない。
さて最後に加わった楽器サントゥールは琴の弦をハンマーで叩いて音を出すのだそうだ。ちなみに私はこれと似た音色のCDを持っている。そのCDにはサルテリオンという楽器が紹介されていた。その音色からたぶん同じ構造の楽器なのではないだろうか、この演奏はベゴニア・オラヴィデ氏でこのCDはカタルニアの音楽を集めたものらしい。つまりここでまたスペインが登場してくるのだが、このスペイン繋がりでの音楽との出会いがトリコロールや最後のサバッチャーグの音楽にまで繋がる。
そしてステージは変わって南米チリ共和国ヴェロソフィアの演奏だ。ラテン音楽と現代ポップスを融合させ独自の詩的世界を作り上げているとても魅惑的なバンドだ。彼らはしばらく封印されていた観客の踊りたい欲求を開放してしまったようだ、そのあと登場のトリコロールがとうとうその欲求に火をつけてしまったようだ。その火は治まることなく、ぐるぐる大蛇の様にステージを取り囲んでいた。
さてアトラスステージのトリで登場したサバッチャーグは前日のシリアスな演奏に代わって、昨晩はなんと浴衣姿で登場してくれた。残念ながらまたピンボケ写真になってしまったが、これが彼らの芸術祭最後の演奏とあって力を込めて舞台を盛り上げていた。ところで演奏の途中、彼女のバイオリンからいきなり床のきしむような音がしだした。一瞬驚いたが、気を取り直して聞いてみると、確かどこかで聞いた音のようだ、私はすぐにその音を思い出すことが出来た。これは必殺仕事人三味線屋の必殺技の音ではないか、前日の公会堂でも演奏されていたが、手元をよく見ると弓に張った弓毛を一部外して、ヴァイオリンのネックに巻き付けて音を出しているようだ。
ところでこんな具合にせっかく海外のアーティストが日本文化を盛り上げてくれているのに今回の芸術祭では、ことのほか日本人の音楽系アーティストの参加が少なかった。代わりにボンバングー、スケサンアンドシュー、油井ジョージ、3ガガヘッズが空いたステージを駆け回っていた。運営のことはわからないが、私はこの現象が未来の日本のようにも感じて戦慄を覚えている。このお祭りを通して私が思うのは、一度手放した文化は簡単にとり戻すことは出来ない、後から頑張っても観光土産が精々ではないだろうか。ではその文化はいつ失われるのかといえば、その文化を楽しむ人間がいなくなってしまった時だ。