今日は好日Vol.2
2023年 12月13日 鰯は強し?
先日函館の沿岸に突然鰯の大群が流れ着いた。とはいえ漁師が捕ったものなら豊漁の話題として今頃市場や缶詰工場は賑わっているはずだが、何の理由かわからないまま流れ着いた魚をそのまま市場に運ぶわけにもいかず、どうすることも出来ないのが現状だろう、残念ながら事態はとうとう沿岸付近には悪臭が立ち込めるまでに至っている。と私はこの事案をまるで他人ごとのように語っているが、函館で起こったこととはいえ函館は本州などの市町村に比べて以外に地域が広く、このブログの情報も新聞やTV報道での情報でしかない。昨日もこのことで市長がこの現場を視察されていたが、今のところこの対応は手作業で魚を回収し、それをゴミ収集車がごみ処理場まで運んでいる状況だ。悪いことに打上げられた魚は砂まみれで、そのままでは焼却処分が出来ず燃えないゴミとして集められているようなのだ。
報道でも市長は早急にこの対策案を検討するとのことだったが、誰も経験したことの無い未知の事案で、きっとこの対応には予算も含めて市長は頭を抱えているに違いない。
ところで、このままの作業を人員を増やし収拾作業を続けた場合、次に来る問題は回収した魚をどこに運ぶかだ。幸い今は寒い時期にあたり、悪臭の被害はさほど大きな問題にはなっていないようだが、これらをすべて埋め立てることにすると、これに掛かる労力もさることながら廃棄場の選定にはさらに難しい壁が立ちはだかるに違いない。
そこで私が考えたのは、地引網のようなもので沿岸に打ち寄せられた魚を、いったん沖合に逃がすものだ。この場合、網と漁船などの費用は必要になるが魚を埋め立てる必要はない。なかにはまだ生きている魚も相当いそうなので、これらの魚を沖まで運んでいるうちに、中には息を吹き返し海洋に戻って行く魚も多くいるかもしれないからだ。幸いにも砂浜に打ち寄せられた魚であれば、網を痛める心配もなく海岸から直接網を使った回収が出来るかもしれない。一方不運にも岩場に押し寄せた魚は直接網で運ぶことが出来ず、そのような魚は放水によって沿岸から遠ざけた後、小型の船舶で回収するという2段階の作業が必要かもしれない。この網を順次リレーすることで沖合の大きな網に追い込むことが出来る。このよな対応を進めるうち体力の回復した魚は海に戻るだろうし、すでに死んでいる魚は網ごと海中に沈めて自然分解されるのを待つ。ここで心配されるのが海洋投棄の問題になるが、海洋を移動させただけの魚を何らかの廃棄物であると断定することは出来ないのではないかという考えだ。
とはいえ大量の魚を一か所または複数に纏めることは環境に全く影響が出ないととは言えないだろう、そのためこの処理には慎重を要する。例えば、このような網を海中に沈めれば、正常に回遊する元気な魚がこの網に潜り込まないとも限らない、このようなことにならないためには相当な深さまで網を沈める必要があるだろう。
最終的に、網の中の魚は海中で一定時間を経過すれば跡形もなく分解され消えてしまうはずだ。このようにこの対応には生態系への配慮は欠かせないものではあるが、函館には北大水産学部があり海洋生物に対する研究には実績がある。それよりもこの事態で沿岸漁業を支える昆布やうにアワビなどへの影響が心配だ。寒さの厳しい折での作業が続くが何とか無事乗り切ってほしい。