今日は好日Vol.2
2023年 12月30日 酒盛りと裸踊りが世界を救った
古事記によると天照大御神(あまてらすおおみかみ)に対し自分の潔白を晴らした弟の須佐之男命(すさのおのみこと)だったが、神々の住む高天ヶ原での粗暴な行いに、太陽神である天照大御神は怒りを抑えきれずとうとう天岩戸に身を隠されてしまった。
その結果世界は常に暗闇に閉ざされてしまい、そこで困った八百万の神々は一計を案じた。その計略とは天照大御神が潜む岩戸の前で宴会を開いき、その様子につられて天照大御神が外を窺ったところですかさず岩戸を塞いでしまう、これにより天照大御神が再び岩戸に御隠れになるのを阻止しようという計略だ。
ということで現在太陽が東の空に昇ってくるのは、この謀が功を奏したということである。それにしてもこの話を聞くと尊い神々の話とは思えないほど微笑ましく感じるのは私だけだろうか。というのも古事記といえば日本最古の書物と言われるが、その中にある因幡の白兎なども他の神話には見られない穏やかさがあり、大らかで微笑ましいくも感じる。要するにこの岩戸開きの神話も、最終的に天照大御神の御心を開かせたのは、天宇受賣命(あめのうずめのみこと)が逆さ桶の上で踊った裸踊りとそれを囲んで盛り上がる八百万の神々の笑い声だった。つまり神々の高らかな笑い声によって再びこの世に光がもたらされたのである。
このように日本人が古代から大切に受け継ぎ、次の世代へ繋ぐため接ぎ木しようとした尊きものとは、崇高なイデオロギーや立派な立ち居振舞いなどではなく、むしろ我々一般人もごく普通に感じている感情の動きと屈託のない笑いなのではないだろうか。
その証拠に古代の日本を記した海外の記録にも、日本の庶民は常に楽しそうに笑っていると記されている。ということは我が身を張って世界を救った天宇受賣命の精神とは神代から繋がる尊いお笑い精神なのだともいえる。現代に生きる我々日本人はこの尊いお笑い精神をしっかり護っていかなければならない、けっして安心なんかしてられないのだ。