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今日は好日Vol.2

2024年1月5日gallery,ようこそ,自作俳句絵画 無意識

2023年 2月21日 おいどんが逝く

私の大好きな漫画家が無くなった、松本零士氏である。この図は週刊マガジンに連載された「男おいどん」というマンガだ、これがなにを描いたものなのか知らない人には想像もつかないことだろう。 これは履き古したパンツに生えたキノコを鍋で茹でている場面だ、もちろん主人公の大山昇太はこの後このキノコで飢えをしのぐ、一見プロレタリアート文学のようでもあるが、そうではないのが不思議である。これほど、どん底の生活でも彼は希望を失うことはなかったし、自棄を起こしてモラルを失うことも無い、彼の座右の銘は人畜無害、無芸大食だ。そして彼の特技は寝ることと食うことに極まる。そんな日々が4畳半という古ぼけたアパートのスペースで繰り広げられている。 私も彼に憧れ、初めて寮で向かえる4畳半生活は正直嬉しかった。そこで漫画にあったように新聞紙を被って部屋で寝ているところをうっかり同僚に見つかってしまい、同僚の同情を引いてしまった。そのことを弁解もしないでいたところ、後でずいぶん差し入れをもらって嬉しかった記憶がある。今でも差し入れに貰ったシュークリームが目が覚めるほど美味しかった思い出がある。 この漫画の世界感は、それまで目にしたどの漫画とも違っていた。それはいわゆるヒーローというものが登場してこない不思議な漫画なのだ。この漫画には一見悲惨で哀れな生活しか登場してこない、しかも物語の最後はいつも悲しい。そんな生活をずっと支えていたのが、彼の心に染み込んでいる日本人の魂のように私は感じていた。 主人公はどれほど悲惨な場目にあっても、決して希望を失うことがなかった。つまりどんなことをしても生き抜こうという気概をかんじるのだ。私はそんな不思議な主人公に憧れていた。そしてそれがどれ程惨めな境遇であっても、主人公は卑屈になって他人に阿ることはなかった。 また主人公はいついかなる相手にも怯むことなく、犬のように相手に噛みついてでも戦う誇りを捨てることはなかった。これが「男おいどん」なのである。 私はこれを日本人の大切な魂のように感じている。それはどれほど困窮の中であっても人間の魂まで捨ててはいけないというメッセージだ。