今日は好日Vol.2
2023年 3月9日 瑞穂の国
日本国をほめたたえる呼び方を瑞穂の国というそうだ。なぜ稲穂が賞賛されるのか住吉大社に伝わる神代記に「とよあしはらの ちいおあきのみずほのくに」という記述があるそうだ、いずれにしろ日本人の食を支える稲穂を国の美しさとしているところが象徴的だと思う。 そしてこの象徴的な稲穂は、日本語と同じように他の植物とは異なる遺伝子の特質を持つそうだ。ところがこの貴重な植物が今危機に瀕している。日本の水稲は古代から品種改良を重ね今日に至る、水稲栽培とは、ある意味日本人の農業技術の結晶で、種を蒔けば勝手に自生するというものではない。 このことから米作を維持するためには農家もセットで考えなければ、成立しない食料なのである。そして今ある危機とは、近々この農家が立ち行かなくなるという危険な事態になっているということだ。以前も紹介したことだが、最大の危機は農家の後継者が居なくなっているということだ。今日本人の少子化が問題となっているが、農家の抱える深刻さはその比ではない、すでに農業従事者の平均年齢は70代になっている。 つまり人間が労働人口に数えられるまでは少なくとも16年の歳月はかかる、ましてや現代のように高学歴化の世界では20年以上の歳月が必要になるからだ。 このような危機に対して政府の取り組みは、農業を守ると口では言いながら減反政策に補助金を使い、その牙は日本の酪農家にまで及んでいる。おかげで日本の農地は荒廃し、その代わり太陽光パネルが野山を覆ている。 悲しいことにこれが、現在日本の嘘偽らざる現実である。これまで日本の国土は、我々の祖先が私心を捨て命がけで守ってきた大地である、一体祖先のどれほどの苦労や悲しみの上にこの国土は受け継がれてきたのか、現代の我々は感謝と共にそのことに真摯に向き合うべきだろう。そのことから言えることは、現代に暮らす我々は目先の利益のために祖国を売り渡し、日本の美しい文化にコオロギやウジ虫を貪る文化など、入り込ませてはならないということだ。 ところで、昨日、独立自尊奥の細道を書き終えたところだったが、偶然にもTVの再放送で奥の細道を辿るベルギー人、コーエンさんが出演されている番組に出会った(youは何しに日本へ)。芭蕉の世界を愛し奥の細道を辿るひた向きな姿に胸襟を正す思いだったが、あらためて世界に愛される俳句の奥深さを知らされた。 そこで、氏が詠んだ句が「海の波 稲穂の波や 永遠の風」ここにはまさに瑞穂の国への思いが込められているように感じた。そこで負けず嫌いな私の友蔵さんは、すぐに歌を返したくなった。 「磯風に 瑞穂のそよぐ 一人旅」