令和 あくび指南
2024年 3月17日 自然に備わる叡智
先日TVで放送された映画を観てとても心温まる思いがした。とはいえ画面に登場してきたのは長靴を履いたおっちゃんとおばちゃんで、彼らは朝から晩まで野山を忙しく走り回っていた。そうは言っても俳優をおっちゃん、おばちゃん呼ばわりするのは阿部サダヲ氏と菅野美穂氏に対しあまりにも失礼だろう、そこはやはり俳優として一般人に無い明らかな輝きがある。ところでこの映画のタイトルは「奇跡のリンゴ」という2013年制作の映画で監督は中山義洋氏だ。因みに、この映画は同年フィレンツェ映画祭の観客賞を受賞している。
そうは言ってもこのタイトルを見ただけでは、この映画は無農薬農法を成功させた偉大な農家の半生を描いた伝記作品と受け取られかねない。こうなると、農業に携わらない人にとってこの映画は特殊な農業技術の話だろうと顧みられない可能性もある、それではとても、もったいない話だろう。実際私もこのリンゴについては青森のレストラン山崎の提供するリンゴのスープを飲んだことがある。とはいえその時は、リンゴがなぜ奇跡とまで言われるのかということに思いが至らなかった。
ところがこの映画を観ることで、この奇跡の意味をようやく理解することが出来たのだ。そしてこの奇跡がブログの重要なテーマに関わっていたことに改めて気づき感動していたのだ。内容の詳細については、この映画の動画配信で確認いただきたい。
その感動とは、先日ご紹介した聖フランチェスコの説く神の摂理であり、百年目という落語に登場してきた旦那の引用にも通じている。さらにいえば明治神宮の杜とは、まさにこの奇跡を象徴するものだと私は受け取っている。というのも、先の朝ドラらんまんに登場してきた南方熊楠氏は土の中の粘菌に注目し明治神宮の複雑な生態系を作り上げたと言われている。そればかりか先頃ノーベル生理学賞を受賞された北里大学大村智特別榮譽教授の研究も土の中の粘菌から大きな発見があったと言われているのだ。要するに土の中では粘菌が植物同士の神経細胞のように連携を取り合っていて、そのことは森全体が我々の知性と同じ知性を持っ可能性があるとされているのだ。もしそうだとすれば、そもそもの叡智というものは、人間の脳みそだけに存在するという考えでは収まりきらなくなる。
映画で木村秋則氏は、この無農薬栽培を人類の為だと仰っていたが、私はこのような自然の中に備わっている叡智に気づくことが、人類の救いになるということを、この映画で表現していたのではないかと思っている。