令和 あくび指南
2024年 3月31日 理想のクリエーター
私が思う理想の絵描きは、何を描いてもその人の存在を感じさせてくれる絵描きだ。ところがそんな思いも今から100年前に美術界に登場したリキテンシュタインやウォーホルが見事に踏みつぶして、美術界に新しい光を示してくれた。一方すっかりその影になってしまったシュルレアリスムに捕らわれている人間もいまだにひっそりとこの世に存在している。
その思いを私が特に強く感じている作家は、2次元の作品では金子国義氏で、立体作家では29日に亡くなられた船越桂氏だ。とはいえ金子氏が醸す世界観は悪魔的であり、船越氏の作品から受ける印象は原初の命やそれを司る神聖な存在なのだ。まるで真反対とも思える感性が、私の嗜好する超現実の世界に君臨している。
ところで船越氏といえば、私が住む函館とは非常に馴染が深い。というのも氏がほとんどの作品素材とする楠の木は、函館の隣町北斗市にあるトラピスト修道院を訪れた際、その着想をえたそうだ。そればかりか氏の父である彫刻家船越保武氏の作品は、函館にある洋食の老舗五島軒の嘗てはマスコットキャラクターのような存在だった。昔マッチの使用が日常だった頃、氏の描いたデッサンがマッチに印刷されていて、老舗高級洋食店五島軒のブランドイメージを我々に伝えていた。
今でもこの店一階にあるバーラウンジでは、彼ら親子代々の繋がりを見つけることが出来る。まったく傍目には羨ましいほどの親子だが、そう思いながらも私の創作活動が赴くとろろは、それとはまったく別の世界のようで、いったい何を目指していることやら、流れに任せるというのものんびり構えているだけにもいかず気が気ではない。